スーツ デ ヘンシン!
Interview
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| 結桶師 川又さん

【Vol.12】結桶師 川又栄風さんはストライプのスーツで変身!

川又栄風さん|Profile

1961年、東京都生まれ。明治20年創業、東京に唯一残る江戸結桶店〈桶栄〉四代目(当代)。伝統の技と美意識を継承しながら、ワインクーラーなど現代の暮らしに合う作品も多数製作している。

— 〈桶栄〉さんは130年もの歴史ある結桶店ですが、やはり子どもの頃から家業を継ぐことは決まっていたのですか。

本当に継ぐって決めたのは、3年ほど外で働いた後ですね。それまでは家の中でそういう話をしたこともありませんでした。

─ 何か明確なきっかけがあったということですね。

就職した先がオートクチュールも手掛ける婦人服メーカーだったんです。だから社内にデザイナーや縫製する人、パターンを作る人がいらっしゃって。「ああ、ものづくりっていい仕事だな」って気付いたんですね。それからしばらくして、家業なので、父親に弟子入りをしました。

─ 修行期間はどれくらいだったのですか。

うちの技法は、材木を仕入れるところから100工程くらいあるんですね。分業では無いので全て1人でやります。だから、それなりの完成度に達するには、やはり10年は掛かったと思いますね。

─ おひつなどの他にも、撮影にお持ちいただいたワインクーラーのように、モダンな作品もたくさん作っておいでですね。

そうですね、材料とか技法は伝統を守りながら。ただ、桶でもおひつでも、もともと生活の道具でしょ。ワインクーラーも同じで、現代の暮らしに合った生活の道具を作っているというイメージですよね。

─ 川又さんは普段どのような“格好”でお仕事されていますか。

作務衣のようなものを着ることもあれば、綿のズボンにシャツという日もありますね。半々くらいです。

─ 作務衣には何かこだわりがあるのですか?

それほどありませんが、ちょっとこだわった、例えばパッと見てわからない程度の細かなストライプが入っているとか、そういう意匠やデザインは好きですね。

─ 粋な江戸の職人さんという感じがしますね。作務衣は年中?

動きやすいので。でも、夏は綿絽など荒い織りの涼しいものを、冬はウールや地厚の木綿のものなどを着ます。

─ 展示会などもされていますが、そういう時にはスーツを着用されるそうですね。

特に初日などには着ますね。お客様など、お相手を意識した“外向き”の衣装という感じで気持ちが引き締まりますから。

─ なるほど。では、作務衣などは “内向き”の衣装でしょうか?

ものを作っている時は誰か相手を意識することはあまりありませんので。作ろうとしている作品とか、自分自身と向き合っていますよね。

─ 今回の撮影ではスーツの雰囲気に合わせてメガネも変えていただいて、かなり外向けでしたね。

いい経験になりました。シャツもタイも自分では選ばない色だったので。丸いメガネも、スタイリストさんが絶対コレが良いと言われるのでね。・・・本当かな(笑)?

─ もちろん、すごく似合っていましたよ!では、これからの目標や夢をお聞かせください。

もっともっと上手になりたいんですね。自分でも日々技術が上がっている実感があるので。

─ 立派な作品をたくさん作っておられますが、まだ成長されていると。

例えば刃物を研ぐということ1つ取ってもね。たくさん刃物を使うのですが、今まではこれで研ぎ上がったと思っていた刃物が、ある時まだ研げるぞって気付いたりする。で、それを使って仕上げると木肌の良さが、美しさがいっそう出るように思えるんですよね。

─ 一生修行じゃないですけど、技術を磨き続けるというか。

もっと上手になれるかも知れないなって思っています。それが熟練ということなのかも知れないですけど。もっと上手になれば、もっと良いものが作れるじゃないですか。やっぱり、良いものを作りたいってことですね。

今回はご着用いただいたスーツ(スーパー120’s生地使用、ストライプ)は、2着税込52,800円のもの。
※掲載商品はイメージです。