高足蟹-攻防-

2023.06.19

高足蟹-攻防-Hiroki Yoshida/吉田 洋紀

素材・技法:日本画・金箔・岩絵具・雲肌麻紙・パネル/2009年
サイズ:147.1×74.1cm×4枚

金箔が未知の画材に見えてくる!
吉田洋紀が挑戦する日本画の最先端

日本画に使われる金箔の新しい表現を追求している吉田洋紀。画面に絵具で凹凸を作ってその上に金箔を押したり、金箔をそぐ、引っかくなどして、今までにない質感を作り出している。今回の作品「高足蟹−攻防−」は、1000枚を越す金箔を使った大型作品。「ガラスなしで見る前提で作った作品です。水生動物が好きなのですが、ここでは作品のサイズに見合った大きさの高足蟹を選びました。特に表現したかったのは蟹の甲羅や脚の硬さ、ゴツゴツ感です」と吉田が言うように、均一でない表面は冗舌だ。

高足蟹-攻防-

吉田は、「光や視点で変わる金箔の表情が好きなんです。モチーフと余白の対比を考える時間も楽しいですね」と言う。屏風などに使われて古典的なイメージのある金箔が、ここでは空気感までも表す最新のメディアのように見える。高足蟹が立っている地面であり、対戦する相手の蟹との空間でもある金箔。緊張感を表すのにこれ以上の画材はない。赤い岩絵具を下地に使っているので、画面全体から赤が感じられ、蟹の甲羅の赤とのマッチングも面白い。日本画の技法を駆使しながら、まったく新しい世界を開いている。「描きたいものを描くだけ」と語る吉田の最も新しい日本画を実感してほしい。

高足蟹-攻防-

吉田 洋紀◎GALLERY ISHIKAWA

1973年、和歌山県生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科博士課程修了。日本画という独特の素材に魅せられ、中でも金箔表現の美しさを追求する気鋭の画家。東京藝術大学大学院の修士論文のために書いた「これからの日本画金箔表現の可能性―宗達作品を中心に」がサロン・ド・プランタン賞を受賞するなど論理的な裏付けと伝統を見据えた探求を併せ持っている。何をもって日本画は日本画であるのか、を問いかける吉田は、岩絵具や金箔を単なる表現の素材として見るのではなく、長い歴史の中で生まれてきた表現の必然性に触れようとし、同時にその今日性を開示しようとしている。

作品に込められた「想い」それぞれの物語

作品を深く理解して、もっと好きになる。制作の背景まで
踏み込んで、アーティストの想いを紐解きます。