パンチなレコード

2023.08.30

パンチなレコードalan/アラン

素材・技法:aclilyc on canvas/2023年
サイズ:91.0×91.0cm

alanの新たな「流用」の世界は、
アートの未来をかいま見せる

「オリジナルとは何だろうというところからスタートしています」と語るのは、本作のアーティストalan。画面に見え隠れしているのは、ミッキーマウスとキャンベルスープの缶だ。alanは元の絵柄をそれぞれの面積の50%以下の割合で画面に配して、「素材」として使っている。このシリーズを「Under 50%+Point」と名付け、オリジナルとは何かを探る刺激的な作品を生み出している。複数の「素材」を組み合わせて使い、トリミングし、ボーダーで覆うことで、画面には新たな関係が発生する。オリジナルが生まれる瞬間を目撃する思いが湧いてくる作品だ。「将来はアナログ絵画、デジタル絵画、デザイン、コラージュとの境界線がより希薄になり、著作権はアメリカのフェアユースが基準になるのではないでしょうか」とalanが分析するように、これからのアートの行方を探る野心的なシリーズになっている。

パンチなレコード

描かれているモザイクは、元のキャラクターの特徴的な部分を消してわかりにくくするためのもの。この作品ではキャンベルスープの缶のマーク(1900年パリ万博出品の印)が消されている。一方で、モザイクは画面上の目を引くポイントにもなっている。キャンベルスープの缶やミッキーマウスといえば、アンディ・ウォーホルの代表的な作品を思い出す。こちらはシルクスクリーンだが、alanはアクリル絵具を使って描いている。特にベタ塗り部分は、手で描くことの意味をもう一度考えさせられる丁寧な仕上げ。この手業は、アメリカのコンセプチュアルアートへのオマージュにも感じられる。

パンチなレコード

alan◎KAWATA GALLERY

1979年、兵庫県生まれ。創作テーマは「愛とユーモア」。ポジティブな感情で制作活動に臨み、自分の絵を見た人によろこんでもらえることに表現者としてのやりがいを感じるという。代表作[Under50%+Point]シリーズは、素材の2分の1未満を使って模写・トレースし、2つ以上の素材を1つのキャンバスにアプロプリエーション(流用)することを基本形態とし、コンテクストの書き換えをしている。1980年代前半にニューヨークで起こったシミュレーショニズムの一形態であるアプロプリエーションアートの流れをくんだ作品として、国内外のコレクターから注目を集めている。

作品に込められた「想い」それぞれの物語

作品を深く理解して、もっと好きになる。制作の背景まで
踏み込んで、アーティストの想いを紐解きます。