BED

2023.09.07

BEDYuka Umino/海野 由佳

素材・技法:Acrylic on canvas, Color foundation/2022年
サイズ:72.7×91.0×2.5cm

海野由佳が描く人体のあいまいさは
生きることへの共感から

海野由佳(うみのゆか)は、人の存在の不安定さや不確実さを、体の輪郭が明瞭でない人物として描いている。その根底には、「コントロールできない体を持って生きることへの共感」がある。海野はこの2、3年ヌードのテーマに取り組んでおり、「絵は世界を美しく見せるもので、世界を変化させることができる」と言っている。「BED」という作品は、画面を支配する黒みのあるグリーンやイエローの色が印象的だ。女性のヌードではあるが、いわゆるヌードを見た印象はない。それは女性があいまいな部分をもって描かれていて、背景や前景と不可分になっているからだろう。画面のそこここに、人間の営みを肯定的に捉えて定着させる作業が繰り返されている。変化し続ける人体を捉えるために、さまざまな挑戦を続ける海野。その表現は現在進行形だ。

BED

海野が描くヌードには際立った特徴がある。顔ははっきりと意志を持っている表情として描写されているが、腕や下半身はもやもやとしてあいまいであり、ベッドや背景の壁紙と溶け合うような表現になっている。このかげろうのような、水面に映った景色のような表現が、人間の揺らぎを表しているようで興味深い。一方で髪は極めてさらりと描かれている。使う色は複雑で、パープルやセルリアンブルーなどが思いがけない組み合わせで迫る。人体に使われている色と大胆な筆致からは、肉感や温度が伝わってくる。

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海野 由佳◎MEDEL GALLERY SHU

1989年、愛知県生まれ。京都嵯峨芸術大学専攻科洋画分野卒業。身体とそれに付随する人格や、人の存在の不安定さをテーマに絵画を制作。人体の範囲をあいまいに描くことで、物理的な形とは別に、日々変化する人格や存在自体の姿を捉え直す。その営みの美しさを作品にすることで、本来はアンコントローラブルな身体を持って生きることへの希望を生み出せるようにと願っている。絵画表現としては色味や筆触によって肉感や温度感を表現することを目指す。「Young Creators Award 2018」MIギャラリー賞&ホルベイン賞など多数の受賞歴があり、多くの画廊オーナーにコレクションされている玄人好みの作家だ。

作品に込められた「想い」それぞれの物語

作品を深く理解して、もっと好きになる。制作の背景まで
踏み込んで、アーティストの想いを紐解きます。