ニラメッコ

2024.07.02

ニラメッコNagisa Shirai/白井 渚

素材・技法:磁土・色釉(鋳込、手びねり)/2024年
サイズ:H31.0×W32.0×D32.0cm

白井渚が作る現代の九十九神は
カタカナを蓄積させていく

得意な鋳込の技術で液状の土をカタカナの型に流し込み、だるまの土台に多層に貼って焼成した白井渚の作品。古い道具に宿るという九十九神は、白井にとって創作アイディアの一つとなっている。「山や川で遊んで育ちました。幼少期には自宅が水害に遭い、自然の恐ろしさを目の当たりにしました。幼い頃から物や自然にはパワーがある感じがして、九十九神や八百万の神とはいつも近くにあるのではないかと思っています」という白井。道具は日常生活の中で使用する人の痕跡だけでなく、使用した場の目に見えない雰囲気を纏っていく。「コトエリシリーズ」と名付けた、カタカナをちりばめたセラミック・オブジェは、言葉にならない想い、行き先のない言葉をカタカナに置き換え、身の回りのモノに蓄積されていく様子を表現している。

ニラメッコ

カタカナのパーツは、カタカナだけで表記した日本語がいちばん理解しづらいという感覚がある白井が、言葉にならない感情や目に見えないものの象徴として使用している。「日本では古来から九十九神を信じ、物に魂が宿るとされている。現代は自分の考えや思想を広く発信しやすい反面、表に出ない思いは濃くなっているのではないかと思う。行き先のない言葉たちが身の回りのモノに蓄積されていく様子を表した」と白井は語る。ところどころにある大きなカタカナは、作品の奥行きを出す狙いがあり、釉薬が流れた様子を見せるために配置している。水玉模様のカラーリングは、色鮮やかなお祭りの屋台や子供の玩具をイメージしたもの。色は感覚的なもので、同じだるまのかたちにも違う色を使うことがある。また、シリーズ名の「コトエリ」には「言葉を選ぶ」という由来もあり、鑑賞者が作品に鏤められたカタカナから日々の心境の変化で様々なコトバを紡ぎ出しても面白いのではという想いも込められている。

ニラメッコ

白井 渚◎GALLERY GYOKUEI

1991年栃木県生まれ。金沢在住。2017年愛知県立瀬戸窯業高校陶芸専攻科修了。2019年瀬戸市新世紀工芸館修了、同年「第76回金沢市工芸展」めいてつ・エムザ社長賞受賞。2021年「第54回女流陶芸公募展」入選。2022年金沢卯辰山工芸工房修了。主な個展に、2020年「白井渚 個展」、2023年「だれかの日常」。グループ展・アートフェアに、2020年「鋳込み IKOMI 2020」、2021年「KOGEI Art Fair KANAZAWA 2021」、2022年「Art Fair Tokyo 2022」、「現代作家茶碗特集」、2023年「ことばのマチエール展」など。

作品に込められた「想い」それぞれの物語

作品を深く理解して、もっと好きになる。制作の背景まで
踏み込んで、アーティストの想いを紐解きます。

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