Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語
作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。
2024.9.20
「or not」
石野 まゆMayu Ishino
素材・技法:アクリル絵具・キャンバス/2023年
サイズ:H72.7×W72.7cm
グラフィック・パターンに意味がある、
石野まゆの左右対称キャラクター
女の子のキャラクターの上にさまざまなグラフィック・パターンを重ねていく石野まゆは、同じ顔を描き続けている。表情ではなく、顔の上にあるパターンや色彩によってキャラクターの個性を感じさせるのが、石野のスタイルだ。「自分が好きな左右対称の顔と、きちんと並んだパターンを融合したら、今のシリーズになりました」と言う。グラフィック・デザインの仕事を通じて、パターンの力を知っているから生まれたシリーズだ。タイトルの「or not」に込められたのは「見えるか見えないか」という意味。鑑賞者ごとに違うはずの見え方が、テーマになっている。
女の子の髪型に重ねられた三角形のパターンがどちらを向いていると思うかは、見る人によって違う。右上に向かうようにも、左へ向かうようにも見え、人によっては上が開いた立方体が並んでいるように見えるかもしれない。三角形はユニークさや個性的な様子を表すかたちだとされる。このキャラクターは、どのような性格に見えるだろうか。ブルーとイエローの色面にピンクのラインというヴィヴィッドな組み合わせも記憶に残る。石野の作品は、細部まできっちりと仕上げられて、完成度が高いと評価されている。
石野 まゆMayu Ishino
[田中美術]
1984年兵庫県生まれ。マサモードアカデミーオブアート卒業。現在、大阪府在住。線、図形、色彩、構図、配置が持つ意味と印象をテーマに制作。モチーフはいつも同じ顔の女の子。デジタルで描いたように見える作品は、すべてアクリル絵具で描いている。