Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語
作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。
2024.9.27
「シーフードヌードル 阿波鳴門の風波」
高村 総二郎Sojiro Takamura
素材・技法:鳥の子紙にアクリル絵具/2024年
サイズ:H65.2×W45.5cm
浮世絵とシーフードヌードルが出会う、
高村総二郎の超時代ポップアート
江戸時代の浮世絵師・歌川広重の「六十余州名所図会 阿波鳴門風波」とシーフードヌードルがこんなにしっくりと合うとは。高村総二郎は広重の作品の青色を、シーフードヌードルのロゴの青に近づけて、一体感を出している。めくれたふたは、高村ならではのリアリズムだ。波の上に飛ぶ千鳥とふたとの空きも絶妙な距離になっている。「アンディ・ウォーホルのキャンベルスープ缶に対抗するなら日本ではカップヌードルだ」と描き始めたこのシリーズは、いまや高村の代表作になっている。「見る人に、カップヌードルが食べたくなったとよく言われます」という高村は、日本的なコンテンツとポップアートを軽々と融合している。
高村によると、この作品で大変なのは広重の版画の模写ではなく、シーフードヌードルのふたの部分だという。ロゴはもちろんのこと、成分表示や注意書きなど細かい文字まですべて描き込んでいるからだ。このリアリティーが強烈な存在感の源泉になっている。ふたがめくれているかたちも高村のこだわりで、ヌードルのカップにお湯が入っている様子を想像させる。この部分にはキラキラと輝くホログラムを使っている。実際のふたの裏を思い出させる演出だ。
高村 総二郎Sojiro Takamura
[Artglorieux GALLERY OF TOKYO]
1965年大阪府生まれ。1988年京都市立芸術大学日本画専攻卒業。2004年第10回尖展(京都市美術館)。2008年第27回損保ジャパン美術財団選抜奨励展(東郷青児美術館)。2011年第5回トリエンナーレ豊橋星野眞吾賞展三頭谷鷹史推奨(豊橋市美術博物館)。2013年今日の墨の表現展(佐藤美術館)。2014年尖20回記念展(京都市美術館)、第6回トリエンナーレ豊橋星野眞吾賞展準大賞(豊橋市美術博物館)、ホテルニューオーサカ心斎橋。2015年YUMI KATSURA GLORIOUS RIMPA(PAVILLON VENDOME FRANCE)。2016年『日本美術全集20巻』(小学館)に掲載。日清食品ホールディングス、豊橋市美術博物館にパブリックコレクション。