Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語

作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。

「『止まっていた時間が動き出した 』~日日日・・・」

2026.1.15

「『止まっていた時間が動き出した 』~日日日・・・」

栗原 針山 Shinzan Kurihara

素材・技法:墨・紙・和額/2024年
サイズ:H100.5×W85.4cm

ひとつの字や言葉に物語をこめて、
熟成した墨を自在に繰る栗原針山。

栗原針山は言葉に光を当て、墨によって作品を描くアーティストだ。ひとつの字の中にもストーリー性をこめたいと、文字から逸脱しない作品を手がけ、しかも文字の意味がわからない人にも通じる表現を追い求めている。字の内外には余白を残して、救いを投影しているという。墨は独自の方法で長時間熟成させている。「墨の作り方には時間をかけています。この作品では磨った墨を3年以上熟成させて使いました。熟成した墨を使うと滲み方が変わります。膨れ上がるように滲むもの、墨同士がぶつかったところが発光するものなどさまざまです」と栗原。墨のせめぎ合いは葛藤が形になったもの。栗原の思いと墨の滲み方は強くつながっている。

「『止まっていた時間が動き出した 』~日日日・・・」深掘りポイント

長時間熟成させた墨によって、独自の滲み方を表現している。栗原は、境界線を「モコモコ・ボーダー」と呼んで、表現の中核に据えている。墨は膠(にかわ)と煤(すす)を練り合わせて作るが、墨を磨ってから熟成させると、タンパク質である膠が分解され、煤の粒子の結合が変化していくという。「墨は使い方次第でいくらでも表情が作れます。滲みには偶然に頼らない計算をしています。繊細なテクニックが、人間の奥底にあるものを表現することになればと思っています」と栗原は語る。「墨のボーダーは光となって紙の上に現れます。この光が見る人の心に灯ってほしいと願っています」。

「『止まっていた時間が動き出した 』~日日日・・・」深掘りポイント

栗原 針山 Shinzan Kurihara

東京生まれ。6歳から筆を持つ。2021年LA ART SHOW(アメリカ・ロスアンジェルス)、’22年Art on paper Brussels(ベルギー・ブリュッセル)、London Art Fair:Project、’23年Art on paper Amsterdam(オランダ・アムステルダム)、’24年ART FOEMOSA 2024(台湾・台北)、’25年ONE ART TAIPEI(台湾・台北)など、近年は海外のアートフェアや個展を中心に活動中。’25年には、静岡県にできた日本旅館「強羅花壇富士」に作品を納入。