Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語
作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。

2026.1.27
「Possession」
サシプラパ・ミーンゴーンSasiprapa Meengoen
素材・技法:キャンバス・油彩/2025年
サイズ:H33.3× W24.2cm
サシプラパ・ミーンゴーンが描く
「もの」で覆われた顔は美の本質を問う
サシプラパ・ミーンゴーン(愛称ピン)は、タイ人のアーティスト。「もの」で覆われた顔によって、物質主義と外見に執着する人々を描き出している。「資本主義とマーケティングが美を消費や所有と結びつけて、外見や物質が価値や成功の象徴だと人々に信じさせました。人々は徐々に内面よりも外見に執着するようになって、『もの』は真のアイデンティティーを隠すものとなりました。私たちはもはや互いの人間性を見ることができなくなっています」とピンはいう。彼女の作品は、現代の美の基準に疑問を抱かせ、小さな動揺を感じさせる。美しい「もの」によって象徴された女性は本当に美しいのか、しばらく考えさせられる作品だ。

この作品は、「もの」を通して映し出された女性の美がテーマ。顔が見えないこの女性の美しさは、透明で装飾的なネイルアートや花の形の髪飾りによって象徴されている。「私の作品は、現代社会に根深く浸透した、『もの』に重きをおく価値観と美の基準について、鑑賞者に問いを投げかけています」とピンは語っている。資本主義によってつくられた美の価値観を、社会によって割り当てられたイメージや価値を象徴する「もの」を使って批判的に描いているピンのスタイルは、タイでも突出して個性的だ。

サシプラパ・ミーンゴーンSasiprapa Meengoen
[nada art gallery]
2002年生まれ。タイ北部の、自然と静けさに囲まれたターク県で育つ。絵を描くのが大好きだった姉の影響で、幼い頃からアートは彼女の生活の一部であり、それがピンの芸術への本格的な旅の始まりとなった。ナレースワン大学建築・芸術・デザイン学部で絵画を専攻し、視覚芸術の学士号を取得。卒業制作の絵画シリーズは、「物を通して映し出された女性の美」と題され、資本主義によって形成された美の価値観についての視点を伝えている。