Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語
作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。

2026.1.27
「Glimmer Cloud #5」
谷口 洸Akira Taniguchi
素材・技法:油彩混合/2025年
サイズ:H53.0×W41.0cm
身近な水辺の景色や風、太陽の光が
谷口洸の制作の原点
木製パネルに手練りの絵具で描かれた谷口洸の作品は、水面の繊細な美しさを巧みに表現している。パネルの木目を水面の波模様に見立て、部分的には木材に絵具を染み込ませるステイニング技法も使う。谷口は、木が持つリズムと色彩のリズムが重なり合う様子に注目してほしいという。「水面には、空の色や雲の影、太陽の光が重層的に映り込みます。波模様は絶えず流れ続け、水底の色をほのかに透かしながら、その姿を変えます。穏やかな水面や風、太陽の光のきらめきといった身近な風景が、制作の動機でありモチーフです。日常に潜む自然のささやかな美しさが、とめどなく繰り返す生命の循環や人の心の揺らぎに寄り添うのを感じます」と谷口は語る。

谷口洸はパネルや額縁を自分で作り、絵具も練り上げるなど、作品の多くの部分を手作業で制作している。作品の一体感はそのおかげだ。制作期間は見た目以上に長くかかっているという。パネルの骨組みに使った国産の杉材は、間伐材として廃棄されてしまうものを加工し直したもの。少しでも環境に配慮した木材を使いたいと考えている。油絵具は基本的に顔料と油を練り合わせている。「市販の絵具には添加物が加えられているため、保存性は高いものの、どうしても色が濁ってしまいます。顔料が持つ本来の美しさを最大限に引き出したいので、手練りの絵具を使っています」という谷口。自然な発色は、心安らぐ作品の印象を生み出している

谷口 洸Akira Taniguchi
[Seta Gallery]
1993年神奈川県生まれ。東京藝術大学大学院絵画専攻修了。シドニー芸術大学、マルタ共和国美術研究所に留学。2019年以降、心象風景としての雲や水面を題材にした作品を多く手掛けている。自身で展示の企画も行い、’21年第3回目「ストレンジャーによろしく」や、’23年「うららか絵画祭」では多田恋一朗と共同代表を務めた。シドニー芸術大学Art-scene・学部長賞(2015)、「アートアワードトーキョー丸の内」ブルームーン賞(2020)を受賞。