Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語
作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。

2026.1.27
「黄昏のモン・サン・ミシェル」
岡田 眞治Shinji Okada
素材・技法:日本画/2025年
サイズ:H38.0×W45.5cm
見るものを景色の中に連れていく
岡田眞治のヨーロッパの風景
日本美術院の公募展である院展で、奨励賞・天心記念茨城賞・外務大臣賞・大観賞などを受賞し、常に日本画の最前線で活躍する岡田眞治。やわらかくて清新な色彩が特徴だ。丁寧な筆致でヨーロッパの風景や、清楚な女性像を描く。岡田は、緻密な現地取材に基づいて制作し、見るものもその場所の風景の中に立たせてくれる。「刻一刻と表情を変える黄昏の光が、北フランスにあるモン・サン・ミシェルの荘厳な姿を包み込む瞬間に心を奪われ、その静謐な時間を日本画の筆致で留めたいと願って制作しました。水面に映り込む光と影は、訪れる者の心の内側をも映す鏡のように感じています。遥かな歴史と、人々の営みが紡ぐ温もりを、やわらかな色層の重なりに託しました」と語る。

注目したいのは、黄昏の光に照らされた建物や岩肌の、微妙な色層の重なりだ。水面に映る反射の揺らぎは、実景とは少し異なる“もうひとつの世界”として描き込んでいる。「細部の筆致のリズムと、空から大地、水面まで続く光の呼応が、全体の呼吸をつくり出すよう描きました」という。「黄昏特有の微妙な光の層を岩絵具で再現することが最大の難所で、特に建築群から水面へと移ろう色の調和には、試行錯誤を重ねています。荘厳さと柔らかさを同時に宿そうと、岩肌や建物の細部と光のにじみのバランスを見極め、時間の気配をとらえるよう努めました」。岡田は写真や映像では得られない「その場の空気感」まで伝えることを、心掛けて制作している。

岡田 眞治Shinji Okada
[吉野画廊]
1962年愛知県生まれ。’87年再興第72回院展初入選(以降毎回出品、35回入選)。’89年愛知県立芸術大学大学院修了(日本画専攻)。’92年第47回春の院展初入選(以降25回入選)。’96年第1回東京日本画新鋭選抜展(大三島美術館)。’00年再興第85回院展奨励賞。’03年再興第88回院展奨励賞、天心記念茨城賞。’04年 個展(松坂屋本店・銀座店)。’09年第94回再興院展奨励賞受賞。’12年第67回春の院展奨励賞・外務大臣賞、第97回院展奨励賞受賞。2018年院展大観賞受賞。’19年第74回春の院展奨励賞受賞。’20年第105回院展奨励賞受賞。現在、日本美術院特待、愛知県立芸術大学教授。