Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語

作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。

「黒牛」

2026.2.2

「黒牛」

宮田 佳子Kako Miyata

素材・技法:雲肌麻紙、墨、岩絵具、銀箔/2024年
サイズ:H41.0×W53.0㎝

墨が持つ微妙な色味で
動物の表情を描く宮田佳子

作品に描いた黒い牛は、宮田佳子の祖父が飼っていた一頭がモチーフになっている。「祖父は牛やポニーを飼っていました。牛はすごく大きいので怖かったんです。でも、あるとき思い切って牛の頭を触ってみたら、意外と怖くなかった。よく見ると、目もやさしくてかわいいと思いました」と宮田は思い出を語る。作品の牛の目は柔和で、宮田の子どものころの印象がそのまま表現されている。宮田は墨の濃淡をはじめとして、さまざまな効果を使っているが、墨で描くことはモチーフの存在感を生むだけでなく、見るものに訴えかける力にもなっている。「アートは日々の原動力になる」と考えている宮田にとって、墨を使った表現は重要な手段だ。

「黒牛」深掘りポイント

牛の頭部を中心に、思い切ったトリミングをした構図。牛には薄墨が使われている。むらむらとしたニュアンスある部分や琳派のたらし込みのように見える部分など、墨の複雑な表情がおもしろい。「日本画の描き方のひとつなのですが、墨や絵具を何層にも重ねて描いています。院展で活躍されている日本画家の那波多目功一(なばためこういち)先生の、岩絵具を重ねている作品があこがれですね」と宮田は語っている。画面に墨や岩絵具の色の魅力が溢れている作品で、細綱の朱色も効いている。

「黒牛」深掘りポイント

宮田 佳子Kako Miyata

1997年岐阜県生まれ。2020年愛知県立芸術大学美術学部美術科日本画専攻在学中に、再興第105回院展に初めて入選する。’21年同大学美術学部美術科日本画専攻卒業。卒業制作は神戸財団賞を受賞した。同年、第76回春の院展に初入選し、再興第106回院展にも入選。’22年​、公益財団法人佐藤国際文化育英財団第31回奨学生美術展で株式会社中里賞とPIGMENT TOKYO賞に選ばれる。’23年同大学博士前期課程美術研究科日本画領域修了。その後は日本各地で展覧会に出品。’24年には、台北のInfinity Japan 2024に出品して、国内外で活躍している。若手の日本画家として、期待されている作家のひとり。