Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語

作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。

「中秋の名月シリーズ」

2026.2.2

「中秋の名月シリーズ」

篠原 有司男Ushio Shinohara

素材・技法:キャンバスにアクリル/2023年
サイズ:H154.0×W105.0cm

伝説のボクシング・ペインティングで
知られる篠原有司男の最新シリーズ

今回の作品は、前衛パフォーマンスで一つのジャンルを作り上げた篠原有司男が、自身の原点を振り返って制作した特別なシリーズ。1961年、雑誌「毎日グラフ」で大江健三郎氏のインタビューを受ける際、古いシャツを手に巻いて墨汁を付け、ケント紙に描いた作品がボクシング・ペインティングの始まりだった。PAHO GALLERYの篠原氏の作品は、すべてニューヨークの篠原スタジオから直接送られたもので、今回の新作は、その初期作品を思い返しながら制作したという。90歳を超えても精力的なパフォーマンス活動を続け、前衛芸術家として国内外で高い評価を得る篠原の、生きるエネルギーが満ち溢れている。

「中秋の名月シリーズ」深掘りポイント

篠原のボクシング・ペインティングは、その名前が表すとおり、体の動きを作品にするという画期的な画法だった。スピード感や力など、絵筆によるそれまでの美術作品には現れてこなかった作家の身体性が芸術となり、アクション・ペインティングの流れの中で代表的な作品となった。美術史の中で語られるだけでなく、現在、手に入れられる作品として新たに作られたこのシリーズは、篠原の活動を振り返ることのできる魅力的なものになっている。

「中秋の名月シリーズ」深掘りポイント

篠原 有司男Ushio Shinohara

東京藝術⼤学在籍後、60年「ネオ・ダダイズム・オルガナイザーズ」を結成。過激な前衛パフォーマンスや「イミテーション・アート」や「花魁シリーズ」(1965年)などで注目を集める。ボクシンググローブに絵の具をつけてキャンバスを殴りながら絵を描く「ボクシングペインティング」は色彩豊か、かつダイナミックであり篠原有司男の代名詞となる。1969 年にジョン・D・ロックフェラー3 世奨学⾦を得て渡⽶、以後ニューヨークを拠点に50年以上活動。MoMA,メトロポリタン美術館、グッゲンハイム、原美術館、東京都現代美術館などに作品が貯蔵され今なお、現代アートのリーダーとして活躍している。2013年、篠原有司男、のり子夫妻のドキュメンタリー映画『キューティー&ボクサー』はサンダンス映画祭ドキュメンタリー部門で監督賞を受賞、2014年のアカデミー賞でも長編ドキュメンタリー部門にノミネートされた。篠原の“人生そのものがアート”という特異な存在感が高く評価されている。