Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語
作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。

2026.2.2
「中判 不二三十六景 東都青山」
歌川 広重Hiroshige Utagawa
素材・技法:木版多色摺/1852年
サイズ:H17.6×W24.1cm
江戸時代の風景画
歌川広重の傑作を楽しむ
「不二三十六景」は、江戸時代後期の浮世絵師・歌川広重が描いた富士山をテーマにした風景画のシリーズ。1852(嘉永5)年頃に佐野屋喜兵衛が版元となって出版された。広重の作品は、大胆な構図と青色の美しさで世界的にも評価されている。欧米では「ジャパンブルー」または「ヒロシゲブルー」と呼ばれる。この色は印象派の画家やアール・ヌーヴォーの芸術家に影響を与えたとされ、ジャポニスムの流行を生んだ要因の一つともされている。江戸時代の風景画を身近で楽しめる作品だ。

江戸・青山の富士見坂から描いた構図。丹沢山系の上に大きな富士山が見える。実際にはこれほど大きく見えることはないのだが、富士山や杉の木を強調することで、存在感と迫力を与えることに成功している。現在の東京都港区に位置する青山は、江戸時代初めに郡上八幡の青山家の下屋敷が置かれたため、この地名になったという。道の右側の長屋風の建物は淀藩稲葉家の下屋敷、左側の柵は妙祐寺境内、奥の町屋は渋谷宮増町と考えられている。宮増町は現在の宮益坂があるあたりで、この坂はかつて富士見坂と呼ばれていた。

歌川 広重Hiroshige Utagawa
[藤アート]
1797(寛政9)~1858(安政5)年、江戸時代の浮世絵師。本名は安藤重右衛門。幼名を徳太郎、のち重右衛門、鉄蔵また徳兵衛とも称した。江戸の定火消しの安藤家に生まれ家督を継ぎ、その後に浮世絵師となった。風景を描いた木版画で大人気の画家となり、ゴッホやモネなどの西洋の画家にも影響を与えた。代表作は版元・竹内孫八(保永堂)版 東海道五十三次。1833(天保4)~35(天保6)年頃刊行。日本橋から京都まで、街道風景や人々の営みを叙情豊かに描き、「風景画の広重」として不動の地位を固めた。