Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語

作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。

「間の今」

2026.8.6

「間の今」

上林 泰平Taihei Kanbayashi

素材・技法:ミニチュア人形・アクリル・キャンバス/2026年
サイズ:H101.0×W126.7cm

ミニチュア人形の集団が照らし出す、
上林泰平の空間と時間

「人が集まり、社会ができる過程で、様々な意味を持つ境界線が生まれ、区別や隔たりが生じてしまいます。この大作では、人々の集団が織りなす『つながり』と『境界』の曖昧さを描きました」と上林泰平。上林は、他者と共有する「間(あいだ・空間)」と、共に生きている「今(時間)」の流動的な結びつきの中にこそ、人間の本来の関係性が潜むと考え、無意識に引いている境界の意味を問い直している。「私たちが引く境界線は、一見すると強固なように見えますが、実はとても不完全で、時代や状況によって変化する移ろいやすいものです。人間本来の対等な関係性や確かな営みを感じてほしいという願いから、タイトルが生まれました」と語る。

「間の今」深掘りポイント

上林泰平の作品には数えきれないミニチュアの人形が並べられている。近くに寄ってそれが人形だとわかったときの驚きは、人が行き交う都市を俯瞰したような感覚に変わる。「大作となると使用する人形の数も膨大となるので一体一体キャンバスに立たせる工程に苦心しました。人形の接着の仕方は常に同じです。左上の端から右端へ、5〜6㎝の幅で人形を置いていき、端まで置き終わったら次の列を左から右へ並べていきます。地に置いての制作なので、たまに立ち上がって俯瞰するくらいですが、4年ほどそれなりにたくさん制作してきたので、見え方の大体のイメージは分かるようになりました」という。

「間の今」深掘りポイント

上林 泰平Taihei Kanbayashi

1985年岐阜県飛騨高山市生まれ。2003年 岐阜県立斐太高等学校普通科卒業。2005年 から2013年まで穂高岳山荘に勤務。2014年第99回二科展に初入選し、以降毎年入選。2015年より飯田市に移住し、本格的に画家活動と登山活動を始める。2015年第11回世界絵画大賞展入選。2016年南信美術展 70周年記念賞。2019年南信美術展南信美術会賞。2019年第104回二科展 二科新人賞。2020年に地元のりんご農園の女性と結婚。画家であり農家である「農画家」として活動を始める。2021年革製品にレザーバーニング技法で絵付けをする「たいへいクラフト」を開業。