Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語

作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。

「somé bloom-6-」

2024.9.27

「somé bloom-6-」

梅田 綾香Ayaka Umeda

素材・技法:蝋染め(絹に酸性染料)/2024年
サイズ:H27.3×W27.3cm

奥行きある画面と染料の色合いが新鮮な
梅田綾香の「シン蝋染め」

梅田綾香が取り組んでいるのは、蝋染めの技術を使って、ほかの画材では表現できない世界を表現すること。蝋染めは溶かした蝋が布に染料が浸透することを防ぐ染色方法だが、梅田は染料の動きを見ながら細かく蝋を置き、何回も染めることによって複雑な画面を作り奥行きを生んでいく。「染めの偶然性ややり直しがきかないことは大変な部分もありますが、そこが魅力でやってます」という梅田。
「顔料と違って染料は布という支持体に入っていきます。絹地の素材感が残るのもおもしろいと思います」と、染料の特性を生かす楽しさを語っていた。

「somé bloom-6-」深掘りポイント

全体に青系の染料を使った作品だが、実は花の中心部には、多くの色を使っている。小さな面積に、黄色など鮮やかな色を入れている。布の素材は絹。梅田は織り柄があるものや光るものなど、布自体の存在感があるものを選ぶことが多い。それは素材によって発色が変わるという染色の性質を生かしたいため。この作品でも絹の素材感を使いながら、重層的な背景を作っている。「somé bloom」というシリーズは花を描いた連作。梅田は色彩と花の表現の両方を追求している。

「somé bloom-6-」深掘りポイント

梅田 綾香Ayaka Umeda

1993年広島県生まれ。2016年広島市立大学芸術学部デザイン工芸科染織専攻卒業。2017年三菱商事アート・ゲート・プログラム奨学生。2018年広島市立大学博士前期課程芸術学研究科造形計画研究専攻染織研究室修了。2015年世界らん展アート部門優秀賞、2016年広島市立大学芸術学部卒業・修了作品展優秀賞・買い上げ賞、2017年第34回三菱商事アート・ゲート・プログラム入選(以降第37、38、39、40、41、42、43、45、46回入選)、第72回新匠工芸会展努力賞、2018年第21回広島市立大学芸術学部卒業・修了作品展修了制作優秀賞、Independent Tokyo 2018審査員特別賞、2020年門司港アートワーフ港オアシス門司港賞、2021年第1回ARTIST NEW GATE Gallery Seek賞、Venture Community for Arts入選、2023年Corporate Art Aid Kyoto 入選。