Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語
作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。
2024.10.1
「ℏ- particle / vortex」
淵上 直斗Naoto Fuchigami
素材・技法:パネルに半導体・エポキシ樹脂/2023年
サイズ:H60.6×W60.6cm
宇宙と未来を見せてくれる
淵上直斗の半導体アート
この作品が何で描かれているかわかる人は少ないだろう。淵上直斗が使うのは半導体だ。キラキラと虹色に光るのは、半導体の基盤に施されたフォトレジストという化学薬剤。淵上は半導体を切り出す前のシリコンウエハーを粉砕して、破片をふるいで分け、画材として使っている。「半導体は急速な発展を遂げているプロダクトで、時代を反映しています。量子力学を勉強してきたので、作品をつくるには半導体がとっかかりになると考えました。半導体の開発には量子力学が貢献してきたからです」と解説する淵上。半導体を粉砕して機能を奪い、無に帰す。それをエポキシ樹脂で何層も塗り重ねて銀河を描く。宇宙を覗くような感覚になる作品だ。
作品の中心部分にはさまざまな色が輝いている。この部分は8層もエポキシ樹脂を塗り重ねている。ひとつの層は数ミリの厚さで、重層的な構造が奥行きを感じさせて、実際の宇宙の広がりのように見える。半導体の表面には回路があって、それを保護するために使われるのがフォトレジストだ。樹脂や高分子ポリマー、感光剤などでできている。回路のある面は虹色に光る。淵上の作品の細部を見ていると、半導体によって動いている現代社会を強く意識させられる。
淵上 直斗Naoto Fuchigami
[TOMOHIKO YOSHINO GALLERY]
1995年兵庫県神戸市生まれ。理工学部物理学科を卒業後、2021年から制作活動を開始。2022年100人10 2022入選、いい芽ふくら芽 in Tokyo 2022入選、TOMOHIKO YOSHINO GALLERY賞受賞、D-art, ART2022(名古屋、神戸、京都)出展、アートフェア東京2022出展、Wood Custom Guitarsコラボ商品発売、歪hizumiコラボ商品発売。2023年『ONBEAT』 Vol.19掲載、BSフジ「ブレイク前夜〜次世代の芸術家たち〜」出演、ネスレ日本東京コマーシャルオフィス・アートコーディネート、島村楽器コラボ商品発売。2024年第9回SHIBUYA ART AWARDS入選、『アートコレクターズ』完売作家2024掲載、Solaé Art Gallery Project vol.26に協力。