Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語
作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。
2024.10.1
「Horizon 2023-03」
木村 佳代子Kayoko Kimura
素材・技法:油彩/2023年
サイズ:H41.0×W53.0cm(10P)
宇宙、命、死、時間を、
花によって描き出す木村佳代子
木村佳代子は、面を含めてほぼすべてを細い面相筆で描く。花によって描くのは宇宙、命、死、そして時間。「東北大震災でたくさんの犠牲者が出たことでこの先どう生きるかを考えさせられました。そのときに、描くことに固執しよう、命を描いていこうと決めました。花屋さんに行くと、植物の死体である花が並んでいた。花を買って枯れるまで眺める行為が不思議に思えました」と花を描くきっかけを語った。「このハスは、イメージとしてはブラックホールで、この世とあの世の境界線です。作品を見て、内臓に見えるという人も死だという人もいました。見る人の人生観が浮かぶのだと思います」という木村。見ていると、花が花でなくなる瞬間がある。
木村の作品は油彩だがマットな印象を与える。それは綿密な下地のつくり方によるもの。その画面の中で、ハスの花の真ん中は自ら発光するように光っている。明るさが、自然と視線を引きつける。「白い部分が空間として決まったとき、この絵が立ちあがってきた」と木村は語る。「立ちあがる」とは、作品が8、9割できたところで、これで大丈夫と思う瞬間のことだ。真ん中の花弁は上に向かっていて、実際の花弁にはない動きを感じさせる。西洋絵画では、ものの輪郭をぼかすが、木村はなめらかな線として描いている。そのために全体に日本画の気分が漂う。
木村 佳代子Kayoko Kimura
[GYOKUEI]
1971年東京都生まれ。1994年東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業、卒業制作買上。1996年東京藝術大学美術研究科修士課程修了。1999年東京藝術大学美術研究科博士課程満期退学、第1回野村賞受賞芸大美術館蔵。2014年FACE2015損保ジャパン日本興亜美術賞入選。2015年Asia Hotel Art Fair、Infinity Japan Contemporary Art Show、Young Art Taipei、2017年Asia Contemporary Art Show、2018年Art Central(’19)、2021年Art Fair Tokyoなど。個展、グループ展も数多く開催・参加している。