Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語

作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。

「植物のつばさ」

2024.9.20

「植物のつばさ」

JUNICHI(小野 純一)

素材・技法:ミクストメディア/2023年
サイズ:H33.2×W33.2cm

伸び続ける植物のように、
自由にふるまうJUNICHIの描線

6歳から絵を描いているJUNICHIが、緑が多い山の上に引っ越してから描くようになったのは植物。それまでは人や建物を描くことが多かった。「近くには植物園があるので、植物を手で触って表面の様子を認識することもよくあります。植物は光のエネルギーを取り入れるために、自分なりのいいかたちになりました。そのままを描くのではなく、自分だけの植物像として描きたいと思っています」と言う。JUNICHIにとって、植物と翼は同じ成り立ちに感じられる。「人のエネルギーがあふれたかたちが翼になる」からだ。この作品では、想像上の植物が翼となって人物の背中から生えている。翼は天使の象徴で、子供の頃から描いてきた。「命は不思議です。ぼくなりのいちばん美しいかたちを描きたい」といつも願っている。

「植物のつばさ」深掘りポイント

画面の右上の青い空には、鳥が飛んでいる。鳥は植物にとって大切な存在だ。植物の実を食べて、種を運び、他の土地に蒔いてくれる。植物は動けないが、鳥によって移動することができる。JUNICHIは、ベランダにとまった鳥を見て画面に描き入れることを思いついた。この作品では、下地に黒を塗り、その上に光を表現する白を塗っている。オレンジ色を別の支持体に塗って転写し、その上に人物を線画で描いている。空のブルーは筆で。鳥は最後に描いたという。

「植物のつばさ」深掘りポイント

JUNICHI(小野 純一)

1989年生まれ。兵庫県西宮市在住。6歳のときに訪れたNYで「自由の女神」に刺激をうけて絵を描き始める。1998年8歳で大阪初個展、2000年10歳で初めての作品集を出版。2002年12歳でNY個展を開催。2005年15歳で長野のスペシャル・オリンピックス冬季世界大会サポート・アーティストを務める。2007年LOUIS VUITTONアジア・スーパーアーティストに選ばれる。2000年より阪神淡路大震災復興キャンペーン公式ロゴを制作。2004年から2017年まで大阪国際女子マラソン公式ポスターおよびメインビジュアル、大会ロゴを制作。2016年NHK「おはよう関西」のオープニングアニメ制作。2018年高さ30mの壁画「苔玉」、全長30mの「二匹の龍」、2019年壁画「Deer's Forest」制作。2020年壁画「Spirit of Plants」「Big Heart」を制作。