Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語

作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。

「かくれんぼ」

2024.12.25

「かくれんぼ」

平松 絵美Emi Hiramatsu

素材・技法:パネル・雲肌麻紙・矢車・岩絵具/2024年
サイズ:H82.0×W24.2cm

平松絵美が描く植物は、季節を語り、
ハリネズミの隠れ家へと誘う。

掛け軸のような縦横比が新鮮な、平松絵美の「かくれんぼ」。タイトルは、いちばん下に描かれたハリネズミが風呂敷の下に隠れているところから付けられている。平松は身近な植物や動物をじっくりと観察し、ディテールを描く。「描いているモチーフから学ぶことがとても多いですね。必ず発見があります」という平松。最上級の和紙である雲肌麻紙くもはだましを使い、ヤシャという植物染料で染めている。その紙をもんで、適度な凹凸を残しながらパネルに貼る。何も描いていない余白の部分にも幸せな空気感が漂うのは、この丁寧な仕事のおかげだ。「隠れた感情を描きたい」という平松の意識が可能にした、メッセージのある作品になっている。

「かくれんぼ」深掘りポイント

「友人がハリネズミを飼っているので、写真を撮らせてもらったりします。夜行性なので、昼間は寝ていてなかなか起きてくれないんです」と平松がいうように、制作には思いがけない苦労がある。動物を描くときに、いちばん注意するのは目だ。いたずらっ子のような目や楽しそうな目など、動物たちの表情を感じさせるのは、徹底した観察によるもの。平松は、ハリネズミの毛やユリの実の模様のように、細かな部分まできちんと描く。真ん中の赤い糸は、関係性を表わす象徴としていつも描いている。ノイバラ、ユリ、ナンテンなどさまざまな植物の実が糸でつながれて、季節を語りながら、ハリネズミに視線を誘導していく仕掛けも楽しい。

「かくれんぼ」深掘りポイント

平松 絵美Emi Hiramatsu

1979年愛知県生まれ、大阪在住。2002年名古屋芸術大学日本画学科卒業、翌年名古屋芸術大学研究生修了。2001年から3年連続日展入選。2015年「豊穣なるもの-現代美術in豊川」出品。愛知県を中心に、積極的に展覧会を開催している。2025年には立体を含むインスタレーションを計画中。