
Newcomer
Newcomer Introduced by 山口祥平(大丸松坂屋百貨店 アートバイヤー)
アートに宿る深い魅力を伝えたい。
作品に込められたアーティストの魂を、
ART365が見いだします。
スペシャル対談 SVGB (SIVELIA、GIRUVI、BURUMORI)
『不揃いな三人の、阿吽の呼吸』
黒いフィギュアと平面作品が醸し出す緊張感。SIVELIA、GIRUVI、BURUMORIのグループ展には、ふと心を揺さぶられる造形が満ちている。普段はほとんど会うことも連絡を取り合うこともないというが、互いの作品への信頼感は非常に高い。

SIVELIAシベリア
[石川画廊]

ビンテージフィギュアから
作り上げる「カルチャーの融合体」
壊れたおもちゃやフィギュアのパーツを集めて手作業でつなぎ合わせ、新たな形を作り上げるSIVELIA。ハイテク技法は使わず、昭和時代のモデラースタイルで仕上げる。その完成度は3Dプリンターを使ったのかと思われるほど。手に入ったビンテージフィギュアの数で制作数が決まるため、作品は少なく、すべてがユニークピースだ。「アンダーカバー」のデザイナー・高橋盾や『攻殻機動隊シリーズ』の映画監督・押井守の作品が好きで、オタク、ストリート、パンクロックのカルチャーに浸ってきた。それらがすべて現在の作品に反映されていると語る。作品にちりばめられたそれらカルチャーの断片、メッセージを探す楽しみも、SIVELIA作品の醍醐味だろう。

GIRUVIギルビ
[石川画廊]

植物の造形の不思議さ、
美しさをストリートアートの文脈で描く
幼少期から絵を描くことが好きで、独学で絵を描き続けてきたが、本格的に活動を始めたのは4年ほど前。育てていたサボテンに花が咲いたことに感動し、植物の造形美に惹かれるようになってから。以来、徹底してこだわるのがモチーフとなる植物のリアリティーだ。作品に触れたひとが植物そのものに興味を抱くように、自身で育てている植物なら観察しながら、手に入らない植物なら資料を徹底的に集め、正確に描く。鉢に品種名を描き込むのもそのためだ。植物の魅力を伝えたいという思いが、例えばシルクスクリーンならすべて手作業で道具まで自作するほどのこだわりと相俟って、ユニットのメンバーも目を瞠る、完成された世界観を創り上げている。

BURUMORIブルモリ
[石川画廊]

癒しを求めて、小さくて黒くて
弱いハムスターを描き続ける
会社勤めをしていて、泣くこともできないほど大きなストレスを抱えていた日々、たまたまWeb上で出会ったハムスターの動画を見続けるようになり、癒しを求めて始めたハムスターの落書きが創作活動に昇華した。現在はアクリル画が中心だが、例えばハムスターが砂で体を洗う習性から着想を得、下地に砂を混ぜてざらざらした感触を出すなど、独自の作風へと進化している。それは、世界が必ずしもきれいでハッピーなだけではないという、少しダークなコンセプトの表現でもある。アニメ『サウスパーク』のような暴力性とギャグが混在する作品を好むBURUMORIの作品世界には、生と死、平穏と不安など、相反するものが共存できる許しが感じられる。

ナチュラルに共鳴する3人の作品が、
今という時代を語る
3年ほど前のグループ展が3人で活動するきっかけとなった。作風がバラバラなため、作品のテーマが重複することはない。GIRUVIとSIVELIAは親しんできたカルチャーが似ているので何となく通じ合うものがあり、一方、BURUMORIは他の2人の想像を超える作品を作ってくる。それが面白く、設営時に初めて互いの作品を見ることを楽しみにしているという。グループ展にあたっては、タイトルを決めるぐらいで具体的な打ち合わせはほとんどしないが、にも拘らず、会場にはSIVELIAが「しっくりくる」と語る、不揃いでありながら調和のとれた心地よい空気感が生み出される。次はどんな作品が持ち寄られるのか、彼ら自身とともに、楽しみに待ちたい。
2025年7月
SIVELIAシベリア
[石川画廊]
新潟県生まれ。ファッションのグラフィックデザインを手がけるかたわら、古いオモチャなどを加工し、組み合わせた立体コラージュを製作。90年代後半からの裏原宿カルチャー全盛の東京で体験したストリートアートに色濃く影響を受けている。アートフィギュア作家として活動を始めたのは2020年後半。現在は、海外のコレクターからも支持されている。
GIRUVIギルビ
[石川画廊]
サボテンをはじめとする多肉植物やエアープランツなど、自宅で育てている植物は200種類430株ほど。自身の生活の中心に植物があるアーティスト。植物とストリートカルチャーを融合した作品のシリーズで知られている。「管理不要の枯れない植物」をコンセプトに、シルクスクリーンやステンシルなど色を重ねる手法を使って制作している。
BURUMORIブルモリ
[石川画廊]
「弱さを肯定する」と「嗜虐心」をテーマに2022年より制作を開始したアーティスト。圧倒的に弱い存在であるハムスターをメインキャラクターとした作品を描く。「弱者」が「強者」に対し持つ恨みや妬みといったネガティブな感情は、人間が持つ純粋な一つの心情だと捉える。「虐げられた後・これから起こる暴力の予知」「懸命に生きる姿」などが描かれている。