Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語
作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。
2024.12.25
「彼女は私よりも自然を知り尽くし、愛していた。/She knew and loved nature better than I did.」
並木 久矩Hisanori Namiki
素材・技法:陶/2024年
サイズ:H24.5×W31.0cm
古代から普遍の形を追求する
並木久矩の歴史感に触れる
「ヒトの歩みを探求する」というテーマを掲げ、作品をつくり続けている並木久矩。「彫刻出身なものですから、作品を少し厚みを持った立体物にしたい考えがあります。僕のテーマである、人類が歩んできた歴史を想像させるような、今自分たちが体感している現実とはちょっと離れた感覚にもっていく作品をつくりたいですね」という。この作品は並木の愛犬をモチーフにしたもの。陶板を彫って輪郭線だけを残し、その輪郭線に釉薬を施して焼成した。並木は、展示空間を含めて作品と考えるインスタレーションを制作することが多い。作品をひとつだけではなく、全体像の中で捉えているのだ。「空間という大きな作品の中に人が入って鑑賞してもらうのを主な方法としているので、それが個々の作品にも表れているのかなと思います」という。
「洞窟壁画が好きだ」という並木。今いちばん気になっているのはトルコのギョベクリ・テペという遺跡で、紀元前1万年前から紀元前8千年前に作られた構造物が埋まっていると考えられている。この遺跡からは、柱に彫られた動物の浮彫が発掘されている。並木の作品のモチーフである愛犬の顔も、古代につくられたとしても不思議ではないようなシンプルで力強い造形だ。愛犬は甲斐犬がかかった雑種で、散歩のときに自由に走っていく姿に自然との一体感を見るという。作品の輪郭線には釉薬が施されて、古代のコインのような印象を与える。陶器の範疇ではあるが、モチーフが掘り出された、または彫刻された感覚を与える作品だ。
並木 久矩Hisanori Namiki
[ギャラリーMOS]
1996年長野県生まれ。2021年愛知県立芸術大学彫刻領域修了。現在同大学専攻の教育研究指導員。2021年アートアワードトーキョー丸の内2021入選、アート・ミーツ・アーキテクチャー・コンペティション2021入選。