Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語
作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。
2024.12.25
「Buffalo」
苫米地 正樹Masaki Tomabechi
素材・技法:陶芸/2024年
サイズ:H45.0×W63.0×D28.0cm
ターコイズブルーが印象的な
苫米地正樹の作品に隠された技術
アメリカのネイティブアメリカンがバッファロー(アメリカンバイソン)の頭骨を陶器と磁器の中間の性質をもつ半磁器で表現しているのは、陶芸家の苫米地正樹。角だけが鮮やかなターコイズブルーだ。苫米地はこのターコイズブルーの色が好きで、幼い頃に自転車をこの色で塗ってもらったほど。この色が好きなところから、ターコイズを聖なる存在としているネイティブ・アメリカンにも興味を持った。そして、バッファローはネイティブアメリカンともっとも近い存在だった動物だ。肉だけではなく、角や骨までも無駄なく使っていたという。陶磁器商社を経て独立した苫米地が、自分の表現したいものをつくった。
苫米地はこの作品に型を使い、陶土と磁器土の両方の性質を持つ半磁土と呼ばれる土を入れてつくっている。それは実際の骨よりも、もっと軽い存在にしたかったからだ。「本物のバッファローの骨はもっとゴツくて、重いんです。普通は上顎だけになったのを壁に飾ってありますので、この作品も上顎だけです」という。作品の軽さは、エッジの薄さでも分かる。また、いちばん目立つターコイズブルーの角は、頭蓋骨と別に焼成しており最後に差し込んで完成させる。差し込み部分の収縮を考慮するなど複雑な形を焼くことができるのは、苫米地が長年作陶の研究をしてきたからだ。技術があったからこそ可能になった形の美しさを堪能してほしい。
苫米地 正樹Masaki Tomabechi
[GALLERY CLEF]
1977年三重県四日市市生まれ。1996年三重県四日市工業高等学校セラミック科卒業。四日市(株)スズ木に入社、工房「萬泥庵」にて作陶。2003年独立、四日市市西阿倉川に築窯。「けむり陶房 苫屋」として活動、現在に至る。1996年炎博覧会ストリートファニチャー縮尺模型展入選、日清食品現代陶芸めん鉢大賞展入選、金沢わんOne大賞「優秀賞」。1999年四日市萬古焼総合コンペ「四日市市議会議長賞」「奨励賞」。2000年四日市萬古陶磁器コンペ 準グランプリ。2001年金沢わんOne大賞「優秀賞」。四日市萬古焼総合コンペ「三重県地場産業復興センター理事長賞」。2007年四日市萬古陶磁器コンペ「準グランプリ」。2009年四日市萬古陶磁器コンペ「優秀賞」。