Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語

作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。

「Automatic Wave $金属市松 B25831828I」

2025.1.10

「Automatic Wave $金属市松 B25831828I」

TARTAROS

素材・技法:$紙幣・日本銀行券・金箔・錫箔・アルミ箔・アクリル・ウレタン・木製パネル/2024年
サイズ:H80.0×W121.0cm

TARTAROSは
北斎と紙幣を合成して現代の偶像にする

「現代美術と日本人をつなげるときに、北斎の作品が機能することを見つけました」といたずらっぽく語るのはTARTAROS(タルタロス)。葛飾北斎はとてつもない荒波を描くことで、自然の力を信仰の対象として表現しているわけだが、「北斎の作品は、スピーディーに変化する今という時代を反映させる素材になってくれます」という。北斎の浮世絵をモチーフに、本物の紙幣を画材として使っている。北斎はインスピレーションで取り入れたモチーフだったが、描いているうちに役割が拡大していった。「現代の信仰の対象はお金です。北斎とお金を合成すると現代的な偶像、つまり崇拝の対象としての絵画が成立するのではないでしょうか」とTARTAROSは考えている。

「Automatic Wave $金属市松 B25831828I」深掘りポイント

TARTAROSは、ある銀行跡地で展示の機会があったときに紙幣を使った作品を初めて発表した。抽象表現が見る人とつながった感覚があったという。この作品では、遠くに見える富士山に旧千円札の裏側にある富士山の絵の部分を使っている。波の飛沫には金箔や銀箔を使った。波頭はドル札。ドル札の表はモノトーンに見えて、シックに仕上がるという。画面に細かく切った紙幣を貼るときは、おみくじを引くようにオートマチックにやっている。偶然で画面ができていくことが、自分が意図した以上の効果を出すと考えているからだ。

「Automatic Wave $金属市松 B25831828I」深掘りポイント

TARTAROS

1969年、石川県生まれ。日本大学芸術学部彫刻科中退。フィギュア原型師として国内フィギュアメーカーの原型を多数制作。プロダクトデザイナーとしては、ディスクカバーがニューヨークMOMAデザインカタログに登録される。音楽活動を経て、40代で現代美術家へ転向。2013年 アートプロジェクト「TARTAROS JAPAN」の活動を開始。タルタロスとはギリシャ神話の地底神であり、世界中の神話に共通して現れる「生命が誕生し、還る世界そのもの」でもある。スピリチュアルな視点で歴史文明、偶像崇拝をテーマに、紙幣を素材にした絵画と版画、瞑想絵画、偶像彫刻、独自のAutomatic Paintingのシリーズを発表している。