Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語

作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。

「Subliminal Switch (I never walk backward)」

2024.9.20

「Subliminal Switch (I never walk backward)」

出口 雄樹Yuki Ideguchi

素材・技法:石膏下地・膠・胡粉・スプレーペイント・ピグメント
サイズ:H25.5×W25.5cm

死の象徴を生きる力にする、
出口雄樹のポップな現代ヴァニタス画

タイトルは、潜在意識に働きかけるスイッチのこと。出口雄樹はこのシリーズで、「繰り返されるイメージで意識を変えること」をコンセプトにしている。描かれているのはコミカライズされたドクロだ。色も描線もさまざまな作品は、石膏下地に岩絵具や偏光塗料を使う。「100年後に、こんな画材を使っていたのかとわかるのがおもしろい。絵画に使える新しい画材の研究もしています」。ドクロは死の象徴として、人生の虚しさをテーマとするヴァニタス画に描かれてきた。出口のポップなこのドクロからは、どうせなら毎日わくわく生きなきゃ、そんな声が聞こえてきそうだ。「何枚も並べるとより楽しい」と、同じイメージを展開するおもしろさも語ってくれた。

「Subliminal Switch (I never walk backward)」深掘りポイント

出口はドクロをポップに描き、死を身近に感じることで楽しく生きるというテーマを表現している。コミックの登場人物のように描かれたドクロは、怖さがかわいさに変換されている。漫画のような吹き出しには世界の格言が。ドクロを描いた後に、絵柄にぴったりの格言を探して書いている。この作品では、「私は後ろに進まない」という格言が選ばれた。言葉はポップアートの文脈では大事な要素だ。画面の中にあると必ず読みたくなる。イメージだけだと止まらない視線も、言葉で止まる。

「Subliminal Switch (I never walk backward)」深掘りポイント

出口 雄樹Yuki Ideguchi

1986年福岡県生まれ。東京藝術大学日本画専攻を卒業後、ニューヨークで制作を行い、国内外で多数の個展・グループ展に参加。大学在学中に最高賞を受賞。三菱商事アートゲートプログラム奨学生に選出され、海の日芸術祭で最高位賞を受賞。また、公益財団法人吉野石膏美術振興財団や国際交流基金から助成を受けている。2019年に帰国し、京都府を拠点に活動。同年、歌手の星野源のアルバムジャケットを手掛けた。名古屋、新宿、福岡、京都、仙台、千葉、渋谷と各地で個展を開催。現在は京都芸術大学美術工芸学科の専任講師を務めている。上賀茂神社、北原照久コレクション、明王物産コレクション、Leo Kuelbs Collectionに作品が収録されている。