Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語

作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。

「こどもmask帽子 -部屋の中-」

2025.1.10

「こどもmask帽子 -部屋の中-」

森本 由貴子Yukiko Morimoto

素材・技法:ミクストメディア/2024年
サイズ:H87.1×W56.3cm

森本由貴子の「超銅版画」は
可愛いけれどちょっと怖い不思議世界

森本由貴子は銅版画と他のメディアを合わせた作品をつくっている。「こどもmask(マスク)」とは、帽子などで顔のどこかを隠している子どもを描いたシリーズにつけた不思議なタイトル。銅版画とレースなどの布を組み合わせ、パーツごとに刷っている。背景はほぼ手描きだ。人物の写真をトナー方式でコピーし、シンナーで紙に転写することもある。「銅版画で満足できる作品が仕上がった時、もっと大きな作品も作りたいと思ったんです。サイズやエディションにとらわれたくなかった」という。「銅版画もひとつの画材」という森本は今、銅版画から逸脱することを楽しんでいる。森本は古典的な銅版画をやりながら、自分独自の方法を見つけた。

「こどもmask帽子 -部屋の中-」深掘りポイント

森本が子どもの顔を隠して描くのは、子どもの表情を分からなくして、感情を想像してもらうため。「顔はどこか隠したいですね。可愛さと不気味さが出るんです。目が合わないようにしたい」。感情が分からないことによって、ミステリアスな作品ができあがった。帽子は重要なアイテムで、動物や植物、布によって装飾されている。この作品では、刺しゅうのある布をひとつの版として使っているという。「初めは銅版画と手描きの境界が分からないようにすることを目指していましたが、今はほどほどのちぐはぐさを出すようにしています。版を使った表現が面白いということを追及していきたいと思っています」

「こどもmask帽子 -部屋の中-」深掘りポイント

森本 由貴子Yukiko Morimoto

1985年千葉県に生まれる。2008年大阪芸術大学美術学科版画コース卒業。2017年浜松市美術館版画大賞入選、CWAJ入選、渋谷芸術祭今村有策賞受賞。2018年CWAJ入選、2018年シェル美術賞入選。