Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語
作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。
2025.1.10
「無形の説話」
静電場朔(Dian)Saku Seidenba
素材・技法:キャンバスに油彩・アクリル/2024年
サイズ:H72.0×W60.0cm
優しい童話をテーマに、
つながりのある世界を構築する静電場朔
静電場朔は中国・北京生まれのアーティスト。現実と夢の境界線をあいまいにして、「優しい童話」のような平面作品を制作している。作品の主人公はミス・アンハッピーと名付けられた女の子で、ブルーとイエローが彼女のカラー。「静電場」と名乗っているように、作者は電気や電波と親和性を感じているので、電気の表現としてイエローをよく使う。人間が感情を揺り動かされたときに、それを音楽や声にして放つところを描いたのがこの作品だ。さまざまな象徴が描き込まれているが、真ん中は沈まない太陽、上には目のある惑星がある。赤のラインは動脈を表している。左上にいる猫は、コントロールできないけれども可愛い存在として描いた。
感情をキャラクター化しているのが、静電場朔の作品の特徴。描き込まれた画面上のアイコンたちを読み解くのが楽しい。この作品でも画面いっぱいにさまざまなキャラクターが散りばめられている。作者は人が音波でつながっていると考えているので、中央では衝突と仲直りが繰り返されるシーンが描かれている。並んでいる口のアイコンは、音がコミュニケーションの手段であることを示唆する。上部に浮かぶ瞳のある惑星は、視覚と聴覚の融合の象徴になっている。
静電場朔(Dian)Saku Seidenba
[SOMSOC GALLERY]
次世代の神話を築くアーティスト
アーティスト/ミュージシャン
北京で生まれ、幼少期をアメリカ、ヨーロッパ、中東、アフリカで過ごし、その多文化的な生い立ちが芸術創造に大きな影響を与える。 中国伝媒大学アニメーション学部で学士号を取得後、修士号取得のために来日。卒業後、東京にアーティストグループ「XL-UNIVERSE」とアートスペース「SOMSOC GALLERY」を設立し、創作活動に専念する。
東京での初展示「妖怪吐息」以降、上海、北京、東京で数々の個展を開催し、日本では越後妻有大地の芸術祭など、国境を越えたアートプロジェクトに招聘される。 中国メディアに留まらず、日本国内の主要メディアからも注目を集める。