Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語

作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。

「猛虎伏草」

2025.2.21

「猛虎伏草」

田中 ラオウRaou Tanaka

素材・技法:アクリル・パネル/2024年
サイズ:H72.7×W91.0cm

生命力で見る人を鼓舞する、
田中ラオウの夢幻の虎

田中ラオウは、カリカチュア(似顔絵)を描くことからキャリアを始めた。約10年間で3万5千人を描き、アメリカで開かれたカリカチュアの世界大会で優勝した経験も持つ。田中は次第に似顔絵以外の作品を手がけたくなり、虎や龍が持つ躍動感や生命力を描くようになった。そこには漫画の影響があるという。キャラクターが必殺技を繰り出すときに背景に現れる強さの象徴としての虎や龍。そのイメージを持ちながら描いている。作品を描く目的は「見た人を鼓舞したいから」と田中は語る。画面からあふれるパワーを、近くで実際に感じてほしい作品だ。

「猛虎伏草」深掘りポイント

田中は虎がどんな姿もさまになる動物だと考えている。描くのは、リアルでありながら、幻想の世界の虎だ。作品の奥に描かれた虎は体全体が仄白く、尻尾の先は青い影の中にあって、異界から来たことを示唆している。この虎の周りには白いもやが漂い、それは虎が発する霊気にも見える。「写実性を求めているわけではないんです。でもリアルに表現する技術はあって当然だと思う。絵に誠実に向き合っていくことが大切と思っています」という田中。思うように描き変えることができるデジタルツールを下描きに使い、ストロークを感じさせるアクリル絵具で描く。田中が描く世界は、現実を超えていく。

「猛虎伏草」深掘りポイント

田中 ラオウRaou Tanaka

1985年生まれ。北海道札幌市出身。北海道造形デザイン専門学校卒。2006年東京でカリカチュアアーティストとしてのキャリアをスタート。2014年、米ネバダ州で行われたカリカチュアの世界大会「ISCA convention」で優勝。世界王者となる。2016年主に動物画を描く画家に転身。2020年初めて個展を開催。2019年Adobe Japan Prerelease Advisor就任、最新デバイスを使ったイラストレーションのデモンストレーターとしても各種イベントに出演する。