Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語

作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。

「虎に翼」

2025.2.21

「虎に翼」

ITOKiN

素材・技法:油性マーカー・アクリル・キャンバス/2021年
サイズ:H60.0×W80.3cm

3色だけで描かれるITOKiNの
見る人をハッピーにする情景。

世界を旅しながら、「MAKE smile」をテーマに作品を制作してきたITOKiN。昨年はタイ・バンコクで、アーティスト・イン・レジデンス(滞在制作)を長期間経験した。旅は創作にとって大切なものであり、作品の源泉だと考えている。「その場所に行くとその場所らしい線が引けます。アフリカでは揺らいだ線が、ヨーロッパではきれいな線ができました」という。リアルな体験はすべての作品に反映している。この作品の虎には翼がある。「あなたにとっての翼を探してねという意識で描きました。それが生きる希望につながっていくといいと思います」とITOKiN。2025年は沖縄に滞在するという。どんな線、作品が生まれるのか、楽しみだ。

「虎に翼」深掘りポイント

ITOKiNは赤青黄の3色のマジックインキで、世界を描き出す。この3色を選んだのは、ヒーローたちに使われている色だから。東北大震災後、自分もヒーローになり、人を助けられるかもしれないと思ったITOKiNにふさわしい色だった。虎に乗る「笠をかぶったITOKiN」くんは、自身がモデル。実際にITOKiNは、出かけるときにこんな笠をかぶっている。虎のお腹には花と星が描かれている。iPadに入れた描画アプリケーションを使ってみたところ、模様が楽しく描けることが分かって取り入れてみたという。ハッピーなITOKiNの世界の、ハッピーな虎が生まれた。

「虎に翼」深掘りポイント

ITOKiN

1982年生まれ。日本福祉大学卒業。東北大震災をきっかけに画家を目指し、会社を辞めて2012年にニューヨークから世界各国を巡る旅に出発。MAKE smile Projectを始めて、出会った人を中心にFacebookのアイコンを製作したり、路上でのパフォーマンスをしながら世界を旅し、3年間で47カ国を巡った。2014年モンベルチャレンジにサポートを受けて、アフリカを縦断。2015年キリマンジャロに登頂。2018年富士ゼロックス(現富士フイルムビジネスイノベーション)本社内通路に総長100mの壁画を製作。2019年作品がLOUIS VUITTONのアートコレクションに加わる。2024年バンコク・ポーチャン芸術大学アートフェスティバルで制作展示。