Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語

作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。

「Dreamed of the World’s Secret」

2024.9.20

「Dreamed of the World’s Secret」

静電場朔(Dian)Saku Seidenba

素材・技法:ワトソン(300g)・水張りパネル・墨・顔彩・金泥・水彩/2024年
サイズ:H45.5×W38.0cm

多文化が解け合ってできあがった、
静電場朔のインナー・コスモス

アーティスト、歌手、アートディレクターとマルチに活動を続ける静電場朔は中国北京生まれ。現在は東京をベースにしている。この作品は人間の内部の世界(インナー・コスモス)を描いたもので、中央の女性には腕が3本、目が三つある。これは静電場が考える「自我・超自我・本我」の三位一体の姿で、胸に描かれた目は心眼だ。背後に描かれた卵のかたちは生まれ変わることの象徴だという。足元にいる黒猫は、コントロールできない超自我を表している。「自分は宇宙の中心にはいるが、RPGのキャラクターのようで、自分の世界を疑っている」、そんな姿が多種類の画材で描かれている。

「Dreamed of the World’s Secret」深掘りポイント

静電場朔はこの作品に、墨や金泥、顔彩、水彩などいろいろな画材を使っている。それは彼女が子供の頃から今までに実際に暮らしてきた、中国、中東、アフリカ、アメリカ、日本の文化の象徴でもある。多文化によって自分が作られていることが描かれていると言ってもいい。黒猫は彼女が飼っている元野良猫の「すし」(寿司と中国語の四喜を表す名前)がモデルになっている。この猫は概念をキャラクター化して、やさしい寓話にしたいという思いから生まれている。

「Dreamed of the World’s Secret」深掘りポイント

静電場朔(Dian)Saku Seidenba

アーティスト/アートディレクター/ミュージシャン
北京生まれ。幼少期をアメリカ、ヨーロッパ、中東、アフリカなど複数国で過ごし、多文化的な背景が作品に反映されている。繊細な観察力と豊かな想像力を用いて、音楽と絵画の両面から独自の“宇宙”を描く、次世代の神話を築くアーティスト。
人間の内心を「内宇宙」と定義し、非生命体を擬人化して自分と世界、人と人とのつながりを象徴的に表現する。修士課程修了後、東京で「XL-UNIVERSE」と「SOMSOC GALLERY」を設立。数多くの個展を開催し、国内外のアートプロジェクトにも参加。
パックマン40周年記念の楽曲提供、『陰陽師』などのアニメ作品の主題歌も担当するなど、ミュージシャンとしても個性的な楽曲を多数発表している。また、国内外の音楽フェスに出演し、彼女ならではのパフォーマンススタイルでファンを魅了し続けている。