Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語

作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。

「えびす(2033)」

2025.2.26

「えびす(2033)」

轟 友宏Tomohiro Todoroki

素材・技法:アクリル絵具
サイズ:H60.6×W50.0cm(12F)

轟友宏が描く「えびす」さまの笑顔が
見る人のパワーを増幅してくれる。

「えびす」は幸福を呼ぶ七福神の中の恵比寿神を描いた作品。轟は「乗り物絵師」を名乗ってさまざまな自動車を描いているが、コロナ禍をきっかけに、自身がコレクションしている郷土玩具を描くようになった。郷土玩具の作品を見た人に依頼されて、七福神に取り組んだという。轟の母方は150年にわたって水引を扱う家であり、和のモチーフを手がけてみたいという思いもあった。七福神は単におめでたい絵柄というより、社会への恩返しのようなつもりで描いているという。「厄よけの絵って、コロナの前とはちょっと感じ方が変わりませんか? 絵によって見る人のポジティブな波動が増幅されるような感じがあるのかもしれないですね」と轟は捉えている。

「えびす(2033)」深掘りポイント

轟は車を描くときも、本来車体に使われていない色を意識して使っている。例えば、赤い車にも緑や青の部分が入っているという調子だ。揺らぐ線は、車を表現する際に独自性を追い求めた結果生まれたもの。「ぐにょぐにょ描くという独自のスタイルがあったから、イタリアでもチャンスをいただけた感じです」と笑う。轟の作品は、イタリア国立自動車博物館にも収蔵されている。この恵比寿の衣装には伝統の吉祥柄である松竹梅を描いた。恵比寿の黄色い左袖は最後までどの色を入れるか悩んだという。黄色を入れることで画面全体が華やかになり、恵比寿が抱える鯛の赤とのバランスが生まれている。轟らしい配色も魅力のひとつになっている。

「えびす(2033)」深掘りポイント

轟 友宏Tomohiro Todoroki

1974年東京都生まれ。乗り物絵師。クラシックカーレースの最高峰であるイタリアのミッレミリアのミュージアムで、東洋人初の個展を開催した。代表作品は独自のタッチで描く車の作品。2003年に村上隆主催「geisaiミュージアム」にて、審査員特別賞(岡本敏子賞)を受賞。2017年には、イタリア最古のチョコレートM A J A N Iの限定パッケージを手がけた。作品は「イタリア国立自動車博物館」、「トヨタ博物館」、「ミッレミリアミュージアム」などに所蔵されている。