Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語

作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。

「人々」

2025.2.26

「人々」

上林 泰平Taihei Kanbayashi

素材・技法:ミニチュア人形・アクリル・キャンバス/2024年
サイズ:H91.0×W91.0×D6.0cm

色とりどりの1/100ミニチュア人形で、
今の世界の姿を描き出す上林泰平。

上林泰平が、高さ2cmほどのミニチュア人形を使ったシリーズを始めたのは2020年頃。地元岐阜県高山市にあるバーのショーウィンドウにアメリカン・コミックのフィギュアがたくさん並べられているのを見て、うれしくなったのがきっかけだ。幼い頃よりおもちゃやフィギュアが大好きだった上林は、「自分もおもちゃを使用してアート作品を制作できないか」と考えた。「ミニチュア人形を使えば、平面上で大衆の心理を表現することができるかもしれないと思いました。人形をちゃんと立たせるまでに、いろいろ試して3年は費やしてしまいました」という。農業をしている上林は、通常は午前3時から午前6時に制作しており、上林の熱量が感じられる作品だ。

「人々」深掘りポイント

この作品に使われたミニチュア人形は約12,000体。元は真っ白の人形をさまざまな色に塗り分けて、性別、国籍、性格、思想、肌の色などの違いを表している。人形がたくさんいるところは、都市部など密集している地域のイメージ。逆に金色の画面にぱらぱらと人形が立つのは人口が少ない地域を表す。この作品はライティングも重要で、ほぼ側面からライティングすると影が長く伸びて、人形の存在感が際立つという。「この作品は、すべての人々が平等に地球上に存在していることを示しています。大地の金色には、すべての人々が祝福されて生まれてきたことを込めています」と上林。地球上にさまざまな人々が暮らしていることをビジュアルで実感できる。

「人々」深掘りポイント

上林 泰平Taihei Kanbayashi

1985年岐阜県飛騨高山市生まれ。2003年 岐阜県立斐太高等学校普通科卒業。2005年 から2013年まで穂高岳山荘に勤務。2014年第99回二科展に初入選し、以降毎年入選。2015年より飯田市に移住し、本格的に画家活動と登山活動を始める。2015年第11回世界絵画大賞展入選。2016年南信美術展 70周年記念賞。2019年南信美術展南信美術会賞。2019年第104回二科展 二科新人賞。2020年に地元のりんご農園の女性と結婚。画家であり農家である「農画家」として活動を始める。2021年革製品にレザーバーニング技法で絵付けをする「たいへいクラフト」を開業。