Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語

作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。

「TENNIS #02」

2025.8.5

「TENNIS #02」

岡崎 実央Mio Okazaki

素材・技法:Acrylic on canvas/2025年
サイズ:H52.0×W42.0cm

スポーツの美しさを平面に再構成する、
岡崎実央の「現代のキュビズム」。

岡崎実央はプロレスをモチーフにした作品を描くことから制作活動を始め、スポーツをする人の動きをキュビズムの手法で表現している。20世紀初頭に生まれたキュビズムは、さまざまな角度から見た対象を幾何学的な形に分解して再構成する手法。これが、360度すべての角度から見られている現在のスポーツ選手を描くのに適していると考えたからだという。岡崎のキュビズムには、選手たちの美しく、力強い動きを画面に留めたいという考えが結晶している。人物とその動きが一体となった画面には、観客の声や競技中の音も描き込まれていて、臨場感を伝えてくれる。

「TENNIS #02」深掘りポイント

この作品で岡崎がもっとも考え、試行錯誤したのは、女性プレーヤーが試合中に作り出す美しい曲線を表すこと。ラフスケッチを描く際に「どのような線と形で表現するか、かなり悩んだ」という。岡崎が選んだのは、サービスのときにトスを上げるプレーヤーの姿だった。スポーツする人たちの一瞬の美しさを伝えたいという意図で選ばれたモチーフだ。また、塗りの丁寧さは、岡崎がこだわっているところ。自身の作品によって、「スポーツが持つ魅力を新たに見つけてもらえれば」という。

「TENNIS #02」深掘りポイント

岡崎 実央Mio Okazaki

1995年北海道生まれ。2019年武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。卒業制作は武蔵野美術大学優秀賞を受賞。2019年ベースボール・マガジン社に入社、『週刊プロレス』の記者となる。アートコラム「闘藝」を企画編集。2021年にプロレスを題材とした作品で、第1回「ARTIST NEW GATE」中島健太賞・リキテックス賞をダブル受賞。2021年にベースボール・マガジン社を退社。以降、「ART FAIR TOKYO」(東京)、「ART BUSAN」(韓国・釜山)、「ART TAIPEI」(台湾・台北)など、国内外のアートフェア、美術展に多数出展している。