Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語

作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。

「Dorohalf6」

2024.9.20

「Dorohalf6」

稲葉 朗Akira Inaba

素材・技法:wood, rasin, sculpture/2023年
サイズ:H47.0×W15.0×D11.0cm

稲葉朗が彫り出す、人の姿と内面は
不思議なバランスで立ちあがる

右半分が泥に覆われたような人物像。作者の稲葉朗は、「人の内面を彫刻で表すにはどうするかを考えているうちにこのような表現になりました。どろどろはネガティブなものではなく、変化し続ける心をかたちにしたつもりです」と語る。外見とは違って、不安定でいて力強い部分もある、矛盾した女性像を表現している。クスノキを彫り進めていき、あるところで半分に切断。レジン製の眼球を入れ、左右の半身を貼り合わせて仕上げる。「目を入れると生き生きします。もっと生きている感じがほしいので、口と眼鏡、靴に彩色しています」。泥部分の展開は無限大だという稲葉。「今はハーフですが、泥がもっと多くなる可能性も感じています」。

「Dorohalf6」深掘りポイント

稲葉がレジン製の目を入れるのは、人らしさを表現したいから。レジンの光沢がリアリティーを与えてくれる。目が木のままだと、どうしても人形のような印象になるという。目はまっすぐに入れるとは限らなくて、横を見ていたり、少し上目づかいにしたりもする。リアルな造形にこの目は欠かせない。人物と泥部分は影響しあっていて、服装も泥のかたちに現れている。普通の人の姿を彫りたいという稲葉にとって、個性を表している服装も大切にしている要素だ。

「Dorohalf6」深掘りポイント

稲葉 朗Akira Inaba

1980年東京都生まれ。2003年東京造形大学彫刻専攻卒業。2007年同大学大学院彫刻専攻修了。2007年から彫刻家として国内外で活動。2007年茨城県芸術祭特賞、ZOKEI展ZOKEI賞。2008年茨城県芸術祭特賞、水戸市芸術祭市長賞、2010年水戸市芸術祭市長賞。2013年茨城県芸術祭会友賞。2014年彫刻の森美術館奨励賞(二科展)。 2017年見参展2017IIDギャラリー賞、二科展二科賞、IAG Awards2017アトリエムラギャラリー賞。2021年二科展会友賞。