Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語

作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。

「記憶の傘―Shibuya in My Hat―」

2025.8.20

「記憶の傘―Shibuya in My Hat―」

ITOKiN

素材・技法:油性マーカー・アクリル・キャンバス/2022年
サイズ:H40.0×W40.0×D2.0cm

旅の感動がITOKiNの作品の原点。
「笑顔で世界を変える」挑戦は続く。

2011年の東北大震災をきっかけに画家を目指したITOKiNは、ニューヨークを皮切りに世界47カ国を回り、路上で制作するパフォーマンスや展示などの活動を続けている。合言葉は「メイク・スマイル」。ITOKiNにとって、旅の感動が創作の原点だ。「旅の経験やそこで得た感動を、キャンバスにそのまま映し出しています」という。この作品は、ITOKiNの旅には欠かせない「笠」に東京・渋谷での忘れられない時間を描き込んだもので、「東京の人に東京の絵を届けたい」という思いから生まれた。「僕にとっての東京は渋谷。さまざまなエネルギーが交差して、旅人の心に火をつけるような場所でした」という。ITOKiNは渋谷の熱量そのものを描くことに成功している。

「記憶の傘―Shibuya in My Hat―」深掘りポイント

「この絵に登場する人たちは、みんな笑っています。僕の描く絵の中では、笑顔こそが希望であり、未来へのエールです」というITOKiN。自分の作品から、「笑顔が世界を変えるという信念」を受け取ってもらえればと願っている。ITOKiNの作品はいつも赤・青・黄の3色だけで描かれている。使っているのは油性マジックだ。制作には、利き手ではない左手を使う。「普通の存在である自分が有名になったら、それはすごいことじゃないか」と思いついて始めた活動は、いまや見る人の笑顔を生み出す作品になっている。

「記憶の傘―Shibuya in My Hat―」深掘りポイント

ITOKiN

1982年生まれ。日本福祉大学卒業。東北大震災をきっかけに画家を目指し、会社を辞めて2012年にニューヨークから世界各国を巡る旅に出発。MAKE smile Projectを始めて、出会った人を中心にFacebookのアイコンを制作したり、路上でのパフォーマンスをしながら世界を旅し、3年間で47カ国を巡った。2014年モンベルチャレンジのサポートを受けて、アフリカを縦断。2015年キリマンジャロに登頂。2018年富士ゼロックス(現富士フイルムビジネスイノベーション)本社内通路に総長100mの壁画を制作。2019年作品がLOUIS VUITTONのアートコレクションに加わる。2024年バンコク・ポーチャン芸術大学アートフェスティバルで制作展示。