Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語

作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。

「Tokyo Crystal island」

2025.8.26

「Tokyo Crystal island」

キタダタキTaki Kitada

素材・技法:Acrylic and photo collage on canvas/2024年
サイズ:H107.0×W80.0cm

現実こそが浄土であると考える、
キタダタキの肯定的な現代の都市。

キタダタキは、都市を描き続けているアーティスト。「都市の喧騒やスピード感、エネルギーや人々の熱量。私の作品は、そんな現代都市の『いま・ここ』に潜む楽園の気配を視覚化する試みです。ただ美しいだけではなく、混沌とした街の中にこそ宿る、震えるような美しさを描きたいと思っています」と語る。仏教の「娑婆即寂光(しゃばそくじゃっこう)」、つまり「この現実こそが浄土である」という考え方に深く共鳴しているキタダは、現代都市を肯定的に捉え、仏教や民族的なモチーフを織り交ぜながら、現代のユートピア像として描いている。

「Tokyo Crystal island」深掘りポイント

都心の路地や工業地帯などを実際に歩き、自分で撮影した風景にさまざまなモチーフを織り交ぜて、現代のユートピアを描き出しているキタダ。実際の風景の中に、描くべき気配や構図があるという。「注目していただきたいのは、写真、線画、絵具のレイヤーが織りなす独特の質感です」と語る。写真にデジタルドローイングを施し、さらにアクリル絵具を重ねていく。一見カオスに見える画面の中には、静寂や祈りの要素が潜んでいる。何気ない風景にたくさんの要素が織り込まれて、キタダならではの浄土が出現している。

「Tokyo Crystal island」深掘りポイント

キタダタキTaki Kitada

1988年東京都出身。2010年イギリス・ウルバーハンプトン大学美術科交換留学。2011年 津田塾大学学芸学部卒業。2013年イギリス・セントラル・セント・マーティンズ・カレッジオブアーツにてファインアート修士号取得。初個展は、2013年ロンドン・13 THE GALLERY「SWITCHED-ON LOTUS」。受賞歴に、2012年「EWAA Award 2012」「The Debut Contemporary Art Award」入選、2014年「光陽展」小品佳作賞、2015年「TURNER AWARD 2015」 未来賞、2024年「いい芽ふくら芽展」 Art Glorieux Gallery賞、2024年「SHIBUYA AWARD」 区長賞がある。