Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語
作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。

2025.8.26
「お風呂」
加藤 ゆわYuwa Kato
素材・技法:木製パネル・アクリルガッシュ/2024年
サイズ:楕円8号
色をテーマに描いたシリーズが
加藤ゆわの世界を語る。
自身の個展のテーマを「十六色」として、16点の作品を描いた加藤ゆわ。そのうちの一作がこの作品で、夫の実家で見た30年ほど使われている風呂を描いている。加藤は、「手入れが行き届き、時間を経てなお清潔さが保たれた水色のタイルがとても印象的で、これを絵にしたいと思ったのがきっかけです」と語る。水場にふさわしい色として選ばれた水色と、水そのものの両方を描きたいと考えた加藤は、水の表現と同時に、一人きりで湯船に浸かるときの自然な表情も捉えたいと思ったという。

加藤がもっともこだわったのはタイルの色合い。「こういうタイルを見たことがある!と思っていただけるようにこだわりました」という。ユニットバスが主流になった今では、タイル貼りの浴室が少なくなり、微妙な色のタイルを見ることも少なくなった。加藤は懐かしさをこめて浴室を描いている。浴槽に入っている人物は、胸元をあまり見せず、しかも不自然でないポーズを追求した。実際に入浴するモデルをスケッチしたというが、モデルがのぼせてしまわないように時間に配慮しながら真剣にスケッチしたという。「洗い終えて束ねた髪の雰囲気と、そっけないほどに自然な入浴時の表情にも目を留めていただければ」という。

加藤 ゆわYuwa Kato
[Seta Gallery]
2007年東京藝術大学美術学部デザイン科卒業。2011年東京藝術大学大学院美術研究科デザイン専攻描画装飾研究室(中島千波研究室)修士課程修了。2011〜2014年東京藝術大学美術学部デザイン科教育研究助手。受賞歴に、2011年メトロ文化財団優秀賞(修了制作)。パブリックコレクションとして、サクラアートミュージアム、東京オペラシティー、Luchiano Benetton Collection、Minneapolis Institute of Artがある。