Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語

作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。

「ANTONIO INOKI ENZUIGIRI」

2025.9.11

「ANTONIO INOKI ENZUIGIRI」

岡崎 実央Mio Okazaki

素材・技法:Acrylic on Canvas/2024年
サイズ:H72.7×W72.7cm

キュビズムで、多様な視点から
プロレスの躍動感を描く岡崎 未央。

スポーツをキュビズムの手法で描く岡崎 実央は、美術大学を卒業してからプロレス週刊誌の記者になった。プロレスは初期から手がけているテーマだ。リングの四方から多くの人に見られているプロレスを表現するのには、多面的な視点を描けるキュビズムがぴったりだと思い至ったという。キュビズムは20世紀初頭にブラックが提唱し、ピカソも一時期実践した手法。ひとつの視点から描くことをやめて多視点から対象物を捉え、立方体(キューブ)などの幾何学的なかたちに変換して表現する。岡崎のキュビズムには必然性があり、新鮮な驚きがある。

「ANTONIO INOKI ENZUIGIRI」深掘りポイント

この作品は、昭和時代を代表するプロレスラーの一人であるアントニオ猪木をモチーフに、猪木の得意技「延髄斬り」を表現したもの。「延髄斬り」は、その場でジャンプして相手の後頭部を片足でキックする大技だ。岡崎の作品では、二人のプロレスラーの手足が四方八方に突き出し、画面上で渾然一体となっている。大小に描きわけられた色とりどりの手が、闘いのさまざまな場面を物語る。握りこぶしや開いた手のひらなどの、体の部分の集合によって緊迫した試合が表現されている。

「ANTONIO INOKI ENZUIGIRI」深掘りポイント

岡崎 実央Mio Okazaki

1995年北海道生まれ。2019年武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。卒業制作は武蔵野美術大学優秀賞を受賞。2019年ベースボール・マガジン社に入社、『週刊プロレス』の記者となる。アートコラム「闘藝」を企画編集。2021年にプロレスを題材とした作品で、第1回「ARTIST NEW GATE」中島健太賞・リキテックス賞をダブル受賞。2021年にベースボール・マガジン社を退社。以降、「ART FAIR TOKYO」(東京)、「ART BUSAN」(韓国・釜山)、「ART TAIPEI」(台湾・台北)など、国内外のアートフェア、美術展に多数出展している。