Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語
作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。

2025.9.11
「Midnight sun」
ITOKiN
素材・技法:油性マーカー・アクリル・キャンバス/2024年
サイズ:H80.3×W65.2cm
ITOKiNが赤・青・黄で描く旅の感動。
タイ・カオサン通りをロボットとして表現。
世界47ヶ国を回り、路上で制作するパフォーマンスや展示を続けているITOKiNにとって、旅は欠かせない。旅で出会った人や感動が、作品を生み出す原動力になっている。この作品はタイ・バンコクのカオサン通りをロボットとして描いたもの。急成長するタイの街に衝撃を受けたITOKiNは、「混沌とした夜の街に燃える『希望の炎』を描きました」と語る。「新しいモールが次々と建ち、その隣には昔ながらの家が残る。そのギャップや勢いに圧倒されて眺めていたら、ロボットの構造に見えてきました。ヒーローそのものを描くことに挑戦してみようと取り組んだ作品です」という。「風景のロボット化」は、旅を愛するITOKiNだからこそ成功している。

「ネオンに包まれたロボットたちは、街で生きる人々の象徴です。カオスの中にも、笑顔と希望は必ずある。そんな『誰かのヒーロー』を、あなた自身の中にも見つけてもらえたらうれしいです」というITOKiN。カオサン通りを描いたロボットは、そこに生きる人々や自動車、稲妻、飲み物、蛇など雑多なものによって構成され、カオスを体現。ITOKiN本人はその肩の上に乗っている。油性マジックの赤・青・黄の3色だけで描かれたロボットが、夜のカオサン通りの光り輝く姿を新しいイメージで表している。

ITOKiN
[Gallery Futaba]
1982年生まれ。日本福祉大学卒業。東北大震災をきっかけに画家を目指し、会社を辞めて2012年にニューヨークから世界各国を巡る旅に出発。MAKE smile Projectを始めて、出会った人を中心にFacebookのアイコンを製作したり、路上でのパフォーマンスをしながら世界を旅し、3年間で47カ国を巡った。2014年モンベルチャレンジのサポートを受けて、アフリカを縦断。2015年キリマンジャロに登頂。2018年富士ゼロックス(現富士フイルムビジネスイノベーション)本社内通路に総長100mの壁画を製作。2019年作品がLOUIS VUITTONのアートコレクションに加わる。2024年バンコク・ポーチャン芸術大学アートフェスティバルで制作展示。