Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語
作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。

2025.9.11
「水中散歩」
橋本 絵里奈Erina Hashimoto
素材・技法:油彩、ペン・ペンキ・アクリル・レジン・キャンバス/2025年
サイズ:H38.0×W45.5cm
可視と不可視のあいだを多重な層で描く
橋本 絵里奈の心地よい抽象画。
画面とやり取りしながら自身の潜在的な意識を引き出し、時空を超える世界観を作り出す橋本 絵里奈。この作品で表現したのは、「深海の奥底や宇宙空間のような、視覚では捉えきれない領域にあるエネルギーの流れやゆらぎ」。橋本は「ナノメートルという極小単位に興味を持ち、人間の目では直接見ることのできない領域にこそ、膨大な情報や美が宿るという考えに惹かれました。科学的な視点と詩的な想像力が交差するこの場所に可能性があると感じ、『可視と不可視のあいだ』『境界のあわい(間)』をテーマに制作を進めました」と語る。曖昧で揺らぎのある水中を描くために重ねられた色や形のレイヤーによって、情報密度の高い空間が立ち上がった。

「水中」は、表層から深層へと移ろう世界を象徴し、静寂や広がり、懐かしさも含む空間。橋本は、「微細な世界の躍動」や「静と動の共存」を、色彩の重なりや流動性によって表現しようとしている。見る人の内面と共鳴し、記憶や感情を揺さぶる空間体験を目指して制作した。画面右上から広がる白い放射線状の構造は、水中で光が屈折し、粒子となって広がっていくような印象を与え、作品全体に生命感や動的なエネルギーをもたらす。静かに広がる青の層は深海や夜の空のような静謐な空間をつくり出す。顔料の質感はエネルギーと躍動感を感じさせる。細部には抽象的な図形や有機的なモチーフも織り込まれて、近づいて見るほどに発見がある。

橋本 絵里奈Erina Hashimoto
[ギャラリーMOS]
1996年大阪府生まれ。2019年愛知県立芸術大学美術学部美術科油画専攻卒業。2021年世界絵画大賞展入選、「橋本絵里奈展」、グループ展「花展」(以降22、23、24年にも開催)、松阪カルチャーストリート(以降22、23年にも開催)。2022年三人展「記憶」、橋本絵里奈展「白昼夢」個展。2023年 UNKNOWN ASIA個展、四人展「Days, life goes on -日々、人生は続く-」(大丸心斎橋店)、橋本絵里奈展「HANABI」個展、2024年D-art,ART2024、福岡天神店グループ展、KOBE ART MARCHÉ 2024グループ展、ART OSAKA2024 大阪市中央公会堂、D-art,ART2024 札幌大丸店グループ展。