Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語

作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。

「パリの通り、雨」

2025.9.11

「パリの通り、雨」

アダム・リスターAdam Lister

素材・技法:アクリル(キャンバス)/2024年
サイズ:H45.7×W61.0cm(12P)

アダム・リスターは名画をピクセル化、
自分のスタイルに変換していく。

アダム・リスターが影響をうけた古今東西の名画を、ピクセルスタイルで再構成する『アート・ヒストリー』シリーズの1点。原作はギュスターヴ・カイユボットが1877年に描いた「パリの通り、雨」(シカゴ美術館蔵)だ。アダムのピクセルスタイルは、画素数のまだ粗い時代のアタリや任天堂のゲームに熱中した幼いころの体験から生まれた。ピクセルに分解されたモチーフはアイコン的なイメージに変化する。このスタイルに辿り着く前までは、具象・抽象表現からジャンクアートに至るまで様々なスタイルを模索してきた。徐々に平面的な表面を選ぶようになった結果、作品は豊かな色彩で埋め尽くされ、想像力をかきたてるものになっている。

「パリの通り、雨」深掘りポイント

アダム・リスターはアクリルと水彩、2種類の画材を使った作品を描いている。水彩は滲みを活かして紙に描かれるのに対し、この作品はアクリル絵具でキャンバスに描かれていて、マットな仕上がりが特徴だ。モチーフは、均一なデジタルのピクセル画像よりも複雑な「リスター風のピクセル」で表現されている。曲線・対角線・境界線は、色のブロックをちょうどいい位置に配置して描く。「原画が想像できる作品をモチーフにすることで、見る人がイマジネーションを膨らませ、作品について考えるきっかけにしたい」とリスターは語っている。

「パリの通り、雨」深掘りポイント

アダム・リスターAdam Lister

1978年、米国ヴァージニア州生まれ。スポーツ、映画や絵画など、作家が影響を受けた作品やキャラクターたちがモチーフとなり、ピクセレートされアイコン化された作品を制作する。Starry Nightは“Art History”シリーズからの一点。フィンセント・ファン・ゴッホ「星月夜」(1889年/ニューヨーク近代美術館所蔵)が元絵となっている。主な展覧会に「End of the Road」(Guy Hepner、ニューヨーク、2022)、「Anime in LA」(Spoke Art Gallery、ロサンゼルス、2023)、「Silver Screen」(GR Gallery、ニューヨーク、2023)などがある。​