Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語

作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。

「HELLO HELLO」

2025.9.24

「HELLO HELLO」

植野 のぞみNozomi Ueno

素材・技法:桐塑立体、桐塑・アクリル絵具・木材​/2024年
サイズ:H71.0×W17.0×D25.0cm

植野 のぞみがつくる動物の姿は、
日常の何気ない一瞬を映し出す。

古くから、雛人形や市松人形に使われてきた桐塑(とうそ)という素材を用いて、動物をモチーフにした立体作品を制作している植野 のぞみ。人の心情や習性を動物の姿を借りて表現している。​「日常に埋もれてしまう名も無き細やかな事象や思いを、いきものの形を借りて表しています。人の形ではないからこそ、彼らは私であり、誰かになり得ます。その姿に経験や感情を投影し、共有できればと願って制作を行なっています」と植野は語る。この作品は、「伝えたいことはあるのに伝えたい先がない。声を届けたくとも、どこに届ければよいのかわからない」という、大衆の中で感じる孤独やジレンマを表現した。

「HELLO HELLO」深掘りポイント

植野の作品は、軽くて自由な造形が可能な日本の伝統素材・桐塑を使っている。桐塑はキリの木の粉を生麩糊(しょうふのり)でつないだ粘土状の素材だ。素材の軽さが、作品のやわらかな印象を生み出すのに成功している。この作品では動物が人間の手を持っていて、電話をかけている。手の先だけが宙に浮いているのが印象的だ。目をつぶった顔は、うっとりとした表情になっている。「ご覧になる方、それぞれに楽しんでいただきたいです」という植野が目指すのは、日常の小さな動きや思いを形にすること。素材とテーマがしっくりとまとまっている。

「HELLO HELLO」深掘りポイント

植野 のぞみNozomi Ueno

1983年三重県生まれ。2006年多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻卒業。’16年 個展「ふりかえり、ふりかえる」。’17年「connect」「Zoo of Arts アートな動物園」。’18年「個展-となりのだれか-」。’19年「個展 -心のすみっこ-」。’20年「ART NAGOYA 2020」「猫日和 猫づくし」「KOGEI ART FAIR KANAZAWA 2020」。’21年「ART NAGOYA 2021」「 Spring has come 」。’22年「ART NAGOYA 2022」「KOBE ART MARCHE」「D-art,ART名古屋​」「KOGEI ART FAIR KANAZAWA 2022」。’23年「ART NAGOYA 2023」「D-ar,tART東京」「KOBE ART MARCHE」「KOGEI ART FAIR KANAZAWA 2023」。’24年「 KOBE ART MARCHE」「Infinity Japan 2024」。’25年「ART365高知」。現在、三重県にて制作。