Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語
作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。

2025.9.24
「Inflatable jacket Warp on the Parallel Universe」
MICHIKO KOSHINO with CASE-K MOONSHINE
素材・技法:PVC,CASE-K MOONSHINEによるacrylic painting/2025年
サイズ:H115.0×W125.0×D40.0cm
デザイナー・コシノ ミチコの
「インフレータブル」がアートに。
コシノは日本を代表するファッション・デザイナーの一人。コシノがつくり出した、空気で膨らませる服「インフレータブル」シリーズがアートになった。耳と尻尾がついたキャットデザインの「インフレータブル」にCASE-K MOONSHINEによるハンドペイントが描かれた作品がそれだ。空気の量を調節して自在にボリュームを変えることができる「インフレータブル」は、洋服の概念を超えた服。そこにハンドペイントされたのは、CASE-K MOONSHINEのアイコン的存在のキャラクターKosmoだ。服が存在感ある作品となって、新たなジャンルのアートが生まれている。

「空気がデザインの一部になっている構造と、この立体的な服に施されたCASE-K MOONSHINEさんのハンドペイントに注目していただきたいです」とコシノは語る。この「インフレータブル」を形にするのには膨大な時間と試行錯誤が必要だったという。また、ハンドペイントを施すのには2カ月以上かかっている。これは空気が入った状態で絵のバランスを取るのが難しかったためだ。このプロジェクトで、「インフレータブル」は服という存在を超えて、新しいメディアとして、アートをまとうプラットフォームになった。

MICHIKO KOSHINO with CASE-K MOONSHINE
[SOMSOC GALLERY]
大阪府岸和田市生まれ。日本のファッション界を代表する一人コシノアヤコの三女。’73年、単身渡英し、以来ロンドンを拠点としてデザイン活動を行う。「インフレータブル」や初めてネオプレーンを使ったタウンウェアなど、独自のデザインでロンドンのクラブやミュージックシーンに多大な影響を与えた。作品は、’80年代ストリートカルチャーの象徴として、英国王立ヴィクトリア&アルバート博物館のコレクションになっている。’86年に始めた「MICHIKO LONDON KOSHINO」ブランドで、欧米とアジア諸国へ進出。藍染めなどの日本の技術と日本のデニムを使ったジーンズブランド「YEN JEANS」がヨーロッパを中心に成功している。エイズ撲滅などの社会貢献運動にも積極的に参加。