Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語
作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。

2025.9.24
「Drip color Bleached Memories – #5」
近藤 大祐Taisuke Kondouh
素材・技法:Panel・acrylic paint・medium/2025年
サイズ:H72.7×W72.7cm
感情や記憶を色に置き換えて可視化する、
近藤大祐の一貫した軸。
「幼い頃から色に強く惹かれ、感情や空気のような目に見えないものを色で置き換えて描いていました」という近藤大祐。大学で都市風景や人工物の構造的な面白さに気づき、修了制作で工業地帯をモチーフに選んだことが表現の原点になった。「絵具の質感や色の重なりなどのマチエールが、記憶や感情の手触りを伝える手段としてしっくりきました」と話す。描くことで自分の内側にある風景や記憶を探り、それを絵画として残すのだという。「自分のフィルターを通して再構築された風景がモチーフ。印象に残った構造やリズムが感情の引き金となって画面に定着していきます」と語る。主観的で曖昧な「記憶」を、構造と色彩によって可視化しようとするのが近藤の一貫した姿勢だ。

近藤は、PC上で設計図を作り、構造や色彩の配置を緻密に組み立ててから、アナログで制作する。「Drip color」シリーズは、注射器から滴らせた絵具の色彩の層が、記憶の重なりや感情の残像を表している。「デジタルからアナログへの移行は、計画と直感を行き来しながら、イメージを形に転写する大切な過程。注射器による描画も、すべて設計に基づいています。一方で、下地づくりや仕上げの段階では、絵の具の質感に変化をもたらす添加剤のメディウムを流し込むなど、制御しきれない工程も取り入れて、偶発性を画面に引き込みます」。計画と偶然のバランスが画面に緊張感と豊かさをもたらし、記憶や感情の痕跡として見えることに強くこだわっている。

近藤 大祐Taisuke Kondouh
[GALLERY TOMO]
1993年静岡県清水市生まれ。2018年京都造形芸術大学(現・京都芸術大学) 大学院芸術専攻ペインティング領域修了。ART FAIR TOKYO(’21、’23、’24、’25)、 ACK(’21、’22)、ART OSAKA(’20、’22、’23、’24、’25)、D-art,ART(’22、’23)、ブレイク前夜展~次世代の芸術家たち~(’23)、清水エスパルス:コーチョーpresents 2024親子ふれあいスポーツフェスティバル(’24)などに出展。様々な企業にコーポレートコレクションとして収蔵されており人気を博している。