Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語
作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。

2025.9.30
「フェラーリENZO(3172)」
轟 友宏Tomohiro Todoroki
素材・技法:キャンバスにアクリル絵具/2025年
サイズ:6号S
伝説の名車「フェラーリ・エンツォ」を
10年越しで描いた轟友宏の「車愛」。
轟友宏は「乗り物絵師」と名乗り、乗り物を描き続けてきた。今回は、イタリアを本拠地とするフェラーリが2002年に出した限定車「フェラーリ・エンツォ」を描いた。創業者の名前を冠した記念碑的なもので、フェラーリがF1で培った技術で作った、公道を走行できるスーパーカーだ。399台しか製造されなかったという。「名車はたくさんあるけれど、絵にしづらい車もあります。この車はフェラーリの中でも特徴的なフォルムで、いつか描きたいと思っていました。実物や写真だととても魅力的なのに、絵にしようとするとのっぺりとした印象になってしまって、完成までに10年以上かかりました」と轟。ついに仕上がった作品には、轟の車への愛が詰まっている。

この作品が完成するまでには、さまざまな試行錯誤をしたという。実際の「フェラーリ・エンツォ」はロッソ・コルサ(レーシング・レッド)と呼ばれる赤色だが、轟は絵画作品ならではの手法、つまりさまざまな色を駆使して車を表現している。「作家としては、とてもとても苦労しましたが、原画ならではのビビッドな色彩を感じていただけましたらうれしいです」と語る。「この作品は先日のイタリア旅行の際にやっと下絵が完成しました。イタリアで完結するなんて、なんという偶然!」と喜ぶ轟。イタリア車らしい明快な色と轟独自の描線が名車の魅力を伝えてくれる。

轟 友宏Tomohiro Todoroki
[Artgloieux GALLERY OF TOKYO]
クラシックカーレースの最高峰イタリアのミッレミリア。そのミュージアムで東洋人初の個展を開催した轟友宏は、乗り物絵師を名乗って乗り物を描き続けている。代表作品は独自のタッチで描く「車」作品。2003年に村上隆主催「geisaiミュージアム」で、審査員特別賞(岡本敏子賞)を受賞。2017年には、イタリア最古のチョコレートMAJANIの限定パッケージを手掛けた。作品は「イタリア国立自動車博物館」「トヨタ博物館」「ミッレミリアミュージアム」などに所蔵されている。個展を国内外で開催し、人気を博している。