Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語
作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。

2025.9.30
「Girl with teddy Exposure」
DOLK
素材・技法:Spray, Oil on aluminum/2025年
サイズ:H80.0×W60.0cm
制作のプロセスが画面に出現!
進化し続けるドルクのスタイル。
DOLKは型紙を用いるステンシル技法で、社会風刺とユーモアを両立させてきたストリートアーティスト。北欧の洗練された感性と、ストリートカルチャーの熱を融合させた唯一無二のスタイルを持つ。最新の「エクスポージャー・シリーズ」では、新しい表現に挑戦。これは「プロセスそのものが露呈されるとアートはどうなるか」という問いから始まった。「新技法と混合素材で試作を重ね、私の身体と意思決定を強調するために、私自身が考案したマシンによる新たな技法も使っています」という。この作品は『テディベアを持った少女』という自身のステンシル作品を「露呈」したもの。新しい領域に入ったドルクは、さらにパワフルな表現で訴えかけてくる。

「作品の中の重なり合う力に注目してほしい」というドルク。「街角にあるものからインスピレーションを受けています。たとえば、古いビルボード、忘れ去られた掲示板、塗りつぶされた落書き、錆、自然界が行う破壊行為などです。私は、ストリートから得た要素を組み合わせ、アートにしているのです」と語る。作品は壁面に重ねられたポスターや落書きのように重層的で、下部にある、少女がくまのぬいぐるみを提げているステンシル作品は腕と鎖しか見えない。「激しさと同時に儚さを宿したかった。素材と身振りがぶつかり合うと、何かが露わになる瞬間があります」と、この新しいシリーズに込めた思いを明らかにしている。

DOLK
[AREA154 Tokyo]
1979年ノルウェー・オスロ生まれ。オーストラリア・メルボルンでアートを学び、2003年からノルウェー・ベルゲンでステンシルアートを始めた、ステンシルアートのパイオニア。’06年Pictures on WallsがDOLKの有名な作品 “Che” をポストカードとして販売。’10年ハルデン刑務所の開所記念に3つの壁画を制作。ノルウェー政府から評価され、政府の依頼を受けて主要鉄道駅や刑務所に壁画を描いている。’12年に震災直後の日本を訪れ、各地に壁画を残した。’16年には新たな歩みとして今までのスタイルとは異なる抽象的な作品を手掛けるようになった。