Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語
作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。

2025.9.30
「摩天楼」
金田 涼子Ryoko Kaneta
素材・技法:キャンバスにアクリル/2025年
サイズ:H56.4×W80.7cm(余白含む)、ed:50
訪れた土地をモチーフに描く、
金田涼子の神話の世界。
摩天楼のそばに座る巨大なキャラクター。周りの雲の上では、作家の描く独自の服装を纏った小さなキャラクターたちが小さな月を運んでいる。現代の風景だが神話の一場面のようだ。金田涼子は、幼少期から触れてきたアニメや漫画のキャラクター表現に日本画の構図や表現を取り入れている。「ひとつの作品の中にさまざまな場所や、異なった時を描くことにより、その土地にある歴史の厚みや時間により移り変わる情景などを表現しています」という。近年は陶芸や大型オブジェなどの制作も手がける。「制作は絵画が中心ですが、展示空間全体での表現など、技法にとらわれずに発表していきたい」と空間への興味を語っている。

訪れた場所からインスピレーションを得て制作している金田は、年に数回旅に出かける。今までは国内が中心だったが、近年は海外の展覧会も多く、その際に見つけたものを描くことに取り組んでいる。「旅先の土地で見聞きしたものや事象には影響を受けています。実在する場所をテーマにすることが多いので、国内外さまざまな場所へ行くようにしています。その土地特有の文化や伝承などを知るのも楽しいですし、大きな自然を前にした感動は作品を制作する上での原動力となっています」。旅は金田の創作の源泉で、欠かせないものになっている。

金田 涼子Ryoko Kaneta
[HRDART]
1991年茨城県生まれ。2014年横浜美術大学卒業。神や自然現象など人知を超えた存在を大小さまざまな女の子たちを描くことにより表現している。近年では日本の土着的な文化や日常的な気配などをテーマとした作品を多く制作。2024年には高級機械式時計メーカー「FRANCK MULLER(フランク・ミュラー)」とのコラボレーションウォッチを発表した。’20年 「あめつち」。’21年「金烏玉兎」。’22年 「In Our Nature」。’23年 『金田涼子 回顧展2020-2022 「幾星霜」』、「雪月風花」、「Snow in The Summer」、「from beyond the sea」。’24年 「流るる星々の行方」、「とこしえの光」、「Everlasting」、「Memories of nature」、「A Change of Scenery」などの展覧会多数。