Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語

作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。

「春ノ日」

2025.9.30

「春ノ日」

蓮井 彩乃Ayano Hasui

素材・技法:紙本彩色/2025年
サイズ:H33.3×W33.3cm

自然の堂々とした姿と存在感を描く、
蓮井彩乃の新しい風景画。

蓮井彩乃が描く景色は、正面から描かれている。「正面から向き合う構図で描くことで自然の堂々とした姿を表現しています。連続性や左右対称性のある構図、デフォルメされたモチーフが、私の独自性を生み出していると思います」と語る蓮井。環境や心境によって景色の見え方や捉え方は違うが、景色の存在自体はそれ以上でも以下でもなく、そのすばらしさを表現したいと思ったことが制作のきっかけだ。実際に訪れた場所を描くことが多いため、取材日の季節や天気によって出会える景色が違う。「制作は天気、主に湿度に左右されます。環境も描く題材も刻々と移ろっていきます。一期一会のこの瞬間を切り取って、形にすることを楽しんで制作しています」と語っている。

「春ノ日」深掘りポイント

注目してほしいところは岩絵具の質感と色彩だという蓮井。「岩絵具には、ジャリジャリした見た目の粗いものから、サラサラした砂のように細かいものがあり、モチーフによって絵具の粗さを変えています。光によってキラキラと光って見えたり、マットに見えるときがありますので、その質感を楽しんでいただければと思います」。描く風景の季節や時間帯によって色を選択し、画面の中で使う色の数を絞ることが楽しいという。「晴れの日も雨の日も草木は輝いて見えるし、水たまりに映る景色はきれいに見える」という蓮井の、景色へのオマージュが画面から感じられる。

「春ノ日」深掘りポイント

蓮井 彩乃Ayano Hasui

尾道市立大学大学院美術研究科日本画を修了後、創作活動を行う。力強く生きる風景を記録している。主に自然風景や植物をモチーフとして光と色彩のコントラストに着目し、日本画の画材を用いて描く。どこか連続性のある風景をモチーフに選び、色数を絞ることにより、パズルや迷路と対峙したような不思議な感覚を表現している。