Focus 作品に込められた「想い」それぞれの物語

作品を深く理解して、もっと好きになる。
制作の背景まで踏み込んで、
アーティストの想いを紐解きます。

「Ryan(Ryoan-ji Tree Sprit)」

2025.9.30

「Ryan(Ryoan-ji Tree Sprit)」

Peter Opheimピーター・オフェイム

素材・技法:キャンバスに油彩/2024年
サイズ:H56.0×W56.0cm

京都の石庭の周辺に見出した、想像上の
生物を描くピーター・オフェイム。

神秘的で不思議な想像の世界へと誘うピーター・オフェイム。カラフルで不思議な生き物たちは、懐かしくも新しい存在だ。オフェイムは2024年に日本を訪れ、京都・龍安寺に行き、枯山水の石庭を見る機会があった。「石庭は禅を極めた空間ですが、その石庭を囲む周りの木々も静かで、厳かで、たいへん美しいものでした」と感動を語る。「周りの木々の中に生き物の存在を感じました。それは木の枝に恥ずかしそうに隠れていました。もしかしたら、木の精霊を発見したのかもしれません」という。この作品はオフェイムが龍安寺の庭で出会った、「Ryan」という生物を描いたもの。この生物が日本で誕生したことに親しみを感じる。

「Ryan(Ryoan-ji Tree Sprit)」深掘りポイント

オフェイムが作品を創作する最初の過程は、粘土で架空の生き物を立体的に造形することだ。その立体感を絵の中に表現することにこだわり、自分ならではの作風を生み出している。キャラクターが絵の中から飛び出してきそうなこの立体感は、オフェイムしか表現できない。それぞれの生き物には名前があり、ストーリーを持ち、一度きりしか描かれない。生き物たちについてオフェイムは、「作品の中で喜怒哀楽を表現しながら、愛や優しさ、強さやはかなさといった、人の心を形づくる、豊かな感情や性質を映し出します。そこに少しの笑いやぬくもりを添えながら、日常にあたたかさを運んでくれています」と語っている。

「Ryan(Ryoan-ji Tree Sprit)」深掘りポイント

Peter Opheimピーター・オフェイム

1961年ドイツ・ラントシュトゥール生まれ。アメリカ・ミネソタ州育ち。1983年ノースフィールドにある聖オラフ大学で美術、経済、アジアを専攻。過去30年にわたり、ニューヨークとニューメキシコ州北部の自宅兼アトリエを拠点に活動。これまでにニューヨーク、ロサンゼルス、モスクワ、ロンドン、パリ、台北、上海、日本で定期的に個展を開催。彼の作品は多くのパブリック・プライベートコレクションとして収蔵。多くの雑誌、新聞、テレビ番組などのメディアでも取り上げられており、欧米のコレクターからも注目を集めるコンテンポラリーアーティストのひとり。