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2023.06.27

core_02Atsutaka Unno/海野 厚敬

素材・技法:油彩・アクリル・木炭・綿布/2022年
サイズ:72.7×60.6cm

見えないもの、うつろうものを描く、
海野厚敬の抽象作法

海野厚敬は、目に見えないものを具現化する抽象表現で知られている。音や気体、感情に至るまで、見えないが確かに存在するものを描く試みを続けている作家だ。「core」は止まらないものの“変化する過程”を描くシリーズ。そのかたちは、起承転結の「承」にあたり、変化の手前の瞬間だという。画面には、本来かたちの無いものが輪郭を与えられたスリリングな世界が展開している。そこには意味やストーリーがあり、想像する面白さを与えてくれる抽象画になっている。

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海野が大切にしているのは、画面の質感だ。絵具と木炭を併用して、ざらついた表面を作り出す。自然界にある鉱物や土壌を思わせる表面が、独特のボリュームを生み出して、複雑な陰影を持つマチエールとして浮かび上がる。作品の存在感はこの陰影のコントラストから来ている。上に描かれた線は、見えないものに輪郭を与える役割を果たしており、画面は重層的で、情報量が多い。見る人の視線は何度も行き来することになる。静かなささやきで満ちている作品だ。

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海野 厚敬◎art gallery Komori

1977年、長野県生まれ。京都芸術短期大学洋画コース研究生修了。画面に表された像は、事物が常に動き、移ろっていく過程を閉じ込めたものだが、中でもその過程の起承転結の「承」に焦点を当て、これから起こるクライマックスの予感や気配などの不可視なものごとを、重厚感を感じさせる抽象表現で描く。2001年より国立新美術館などで毎年開催されている新制作展を始め各地で個展を精力的に開催。上野の森美術館大賞展 優秀賞(産經新聞社賞)、関西新制作展 新作家賞を受賞するなど現代作家として評価が高く、今後ますます活躍が期待されるアーティストである。

作品に込められた「想い」それぞれの物語

作品を深く理解して、もっと好きになる。制作の背景まで
踏み込んで、アーティストの想いを紐解きます。